2018年7月 槍ヶ岳登山

7月に槍ヶ岳に登ってきました。
ここしばらく年1回更新がやっとの当ブログですが、
6月の燕岳登山に続いて、7月に槍ヶ岳に登りにいく機会が出来たので
登山記録をUPしました。
今年の夏の登山は槍ヶ岳に目標を定めていたが、問題はどのコースで登るか。
槍ヶ岳に登るには何通りかの登山ルートがあるが
当初は燕岳、大天井岳を経由していく「表銀座縦走コース」を想定していた。
表銀座ルートは、安曇野の家から登山口の中房温泉へのアクセスも良く
登りなれた燕岳、昨年テント泊できなかった大天井岳を経由していく非常に贅沢なコース。
私も小学生のときに一度は辿ったルートだ。
しかし計画段階で
・仕事の都合(表銀座縦走コースは最低、丸3日は必要)
・体力的な調整の失敗(正直いったらトレーニングのサボり・・・)
・登山の安全性(はやく言えばテント背負って縦走コースを歩ききる自信無し)
を考慮し、最終的には
上高地から槍ヶ岳に登る「上高地コース」に決定。
【1日目】

【PM13:30 沢渡駐車場】
前日夜に地元四国を出発し、翌日の昼過ぎにようやく沢渡駐車場に到着。
この日は土曜日だったが、上高地から登山する人は早朝出発の人が多いので
上高地行きのバスは私を含めて数人と非常にすいていた。

途中、バスの車窓から大正池を眺める。上高地のバスターミナルももうすぐ。

【PM14:30 上高地バスターミナル】
上高地のバスターミナルに到着。
バスターミナル横にあるインフォメーションセンターで登山届けを提出する。
すでに大きなザックを背負っている登山者の姿は少ないが、軽装の観光客の方はいっぱい。
今年の暑さのせいか、やはり避暑地の上高地は人気があるようだ。

【PM14:50 河童橋】
ここが今回の登山のスタート地点。
上高地も9年ぶりに訪れたが今年は特に暑く、この日は上高地でも30℃近くあった。
「半袖、短パンでも暑い・・・」

しかし河童橋から見る、穂高連峰の景色はいつ見ても素晴らしい。
梓川の水の綺麗さにわずかばかりの涼をもらい、歩き始める。

ここからしばらくは整備された遊歩道を歩く。
河童橋から30分ほどで上高地観光スポットのひとつ、明神池の分岐に到着。
この日は時間に余裕があるので立ち寄ることにする。

【PM15:30 穂高神社奥宮 明神池】
明神橋を渡り、程なく歩くと明神池に到着。

拝観料300円はかかるが、一見の価値あり。
正面にそびえる明神岳、澄んで透明な水面、立ち枯れした木々。
なんとも神々しくて神秘的な雰囲気が漂う池です。
ここで今回の登山の無事を祈り、御祈祷。
日本的でインスタ映え?するのか外国人観光客の方々があちらこちらで写真撮影していた。

明神池から先は徐々に観光客も減っていく。
道はまだまだ平坦。明日からの本格的な登山道への良い準備運動。
今日の泊まりは、この先の徳沢園か、出来たら横尾山荘まで行く予定で歩いていた。

徳沢ロッジに到着。
ここは宿泊はもちろん、宿泊者以外でも外来入浴が出来るお風呂付。

徳沢ロッジの前を通り過ぎると、徳沢キャンプ場が見えてきた。
すでに色とりどりのテントが並び、けっこう賑わっている。

【PM16:50 徳沢園 到着】
明神池で寄り道をしていたので、この時点ですでに夕方の5時。
次のキャンプ地、横尾山荘まではここから1時間の距離だが
ゆっくり設営して、のんびりしたかったのでここで宿泊することに決定。

下が草地の林間キャンプ場。
山のテン場とは違い、キャンプ場感満載。
子供が成長してから、ここ何年かはキャンプにも行っていないので。
「こんなところでキャンプするの何年ぶりかな~?」

テントは昨年、山用に購入した、ファイントラックのカミナドーム2
安心と信頼のmade in Japan、高性能で軽量のため迷ったあげくに二人用を購入。
一人で使うと広々で快適。片付け下手でテントの中でぐちゃぐちゃに荷物広げる私にはピッタリ・・・(汗

【PM18:00 夕食】
テント泊だが、徳沢園で夕食。
岩魚定食 @1600円。
テント客でも夕方5時までに予約すれば、徳沢園の喫茶スペースで食事可能。
徳沢園に着いたのが5時直前だったので、すぐに予約していた。
ついた時点でキャンプ飯する気 “0”ゼロ!
岩魚定食を美味しくいただき、その後は徳沢ロッジでお風呂につかる。
そして寝るのは牧草地の心地いいキャンプ場。
「もう、すっかりリゾート気分だな~」
そう、リゾート気分で幸せなのはこの日までで
明日から地獄の灼熱登山が待っているんだけどね。

本日の目的地 殺生ヒュッテ テント場
【2日目】
槍ヶ岳登山、2日目の朝からです。
昨夜は10時ごろ就寝したにもかかわらず、夜中の1時に目が覚める。
久々のテント泊。寝慣れないのか、気持ちが高ぶっているのか
それ以降は目が冴えて、なかなか眠れない。
この日は星空が綺麗だったので、テントから顔を出して星を眺めていた。
「どうせ眠れないなら、早く出発するか」
まわりに迷惑がかからぬよう3時過ぎから夜食ならぬ朝食のラーメンを食べる。
明るくなる前に出発しようかと思ったが、片付けと撤収に手間どり結局、夜が明けてしまった。

【AM5:30 徳沢園 出発】
どんだけ撤収遅いのか・・・(ここらへんは今後の課題ですね。)
それでも徳沢園の朝はみんなゆっくりしていて、まだ行動している人は少なかった。
日程的にこれから上高地に下る人が多いのだろう。

昇りかけの太陽を浴びる明神岳が幻想的で綺麗だ。
まだ朝一で涼しくて快適。日が昇って暑くなる前になるべく距離を稼いでおきたいところ。

【AM6:10 横尾山荘】
徳沢園から40分ほどで横尾山荘に到着。
立派な山荘、トイレも有料だがとっても綺麗。テント場も広いし、ここでのキャンプでも全然良かった。
上高地から片道3時間かかる上に、各登山ルートの分岐点になっているため
ここに居る人たちはほとんど登山者たちだろう。皆、朝の支度を始めていた。

横尾大橋。こちらを渡ると、涸沢・穂高方面。
(秋にはここから涸沢や奥穂高岳もいいな~)

上高地からここまで11km、ここから槍ヶ岳まで11km。ちょうど中間地点?
「ホントか!?槍ヶ岳、以外と近いじゃん」
(これがそもそもの間違い・・・)

横尾から槍ヶ岳と蝶ヶ岳の分岐。
“ここから先は登山の装備が必要です” の表示。ここからはだんだんと山道になっていく。
ここで、ダブルストック・登山用高機能タイツ・熊鈴を装着、準備万端。
熊鈴は昨年、燕岳で熊と遭遇してからつけるようにしている。
(熊さんの生活圏内にお邪魔する訳だし礼儀というか、こちらとしても絶対に出くわしたくないもんな)
ここから右方向に行けば蝶ヶ岳。
上高地→蝶ヶ岳→常念岳の縦走もいいコースそうですね。

【AM7:30 一の股】
途中、梓川の支流をまたぐ橋をわたると一の股。
その先5分ほどで、さらに立派な橋を渡ると二の股の標識。

ここまでは木陰のトンネルの中、梓川支流の美しい流れとせせらぎを聞きながらの快適なコース。

【AM8:00 槍沢ロッジ】
ここは、宿泊・食事そしてこの先のババ平キャンプ場の受付もしてくれる。
休憩して涼や軽食をとる人も多かったが、この日は日曜日のため
休んでいる人の多くは槍ヶ岳方面からの下山者らしかった。
ここでは朝食がわりのパンを購入、無料の水を補給して50分ほど休憩。

【AM9:20 槍沢ババ平野営場】
ババ平野営場は樹林帯を抜けたところにあった。
このあたりから急に日差しが強くなってくる。
テントからの見晴らしは良さそうだけど、日差しを浴びてテントの中はとても暑そう。
一見テントを張れるスペースは少なそうだったけど、この先の沢沿いにも砂地のスペースがあった。
ネット上で見た、以前のここのトイレは使うのを躊躇うぐらい強烈なトイレだったが・・・現在は

「なんと言うことでしょ~う!」
と、ビフォーアフターのナレーションが
聞こえてくるぐらい綺麗になっていた(笑)
もちろんチップトイレ。登山道のトイレが綺麗になっていくのは非常にありがたいので
個人的にチップトイレは大賛成です。
特に北アルプスは登山道と山小屋の整備が進んでいて、登山者からの人気も理解できる。

景色が開けてくると、ここから徐々に登りもきつくなってくる。
地図を見るとここから、大曲まで1時間40分。さらにその先の天狗原分岐まで1時間。
「休憩いれても3時間か、けっこうあるな・・・」 と思いつつ登りはじめる。
全体的な登りの傾斜はそれほど急ではないが、じわじわと高度を上げる登りに苦労する。
そして何より暑い!!
一歩進むごとに汗が噴き出し、身体が熱くなってくる。この日は天気が良いぶん日差しも強烈だ。
荷物の重さと暑さが一歩一歩、ボディーブローのように効いてくる。
そして、大曲を通過するあたりで完全に足が止まる・・・
(この部分、文字が多いのは、すでに写真を撮る元気もなくなっていたためです・・・)
熱中症を疑うが、水分・塩分・補給食と対策は十分にしてきた。
熱中症特有の症状も出てきてないし、食料もしっかり取っているのでハンガーノックでも無い。
思い当たるのは単なる疲労と寝不足。
(要はトレーニングさぼったツケが廻ってきただけである。)
兎に角、休憩をとる為に沢の近くで腰を下ろす。残念ながらここに日陰は無い。
疲労と暑さにグッタリしながら、少し弱気になる。
「一回、槍沢まで下りて、テント泊用の荷物減らして登りなおすか」
「いっそ槍沢小屋で泊まって、明日帰っちゃおーか」
もう撤退を考えるほど、登る気 “0”ゼロ である。
(この部分。文字が多いのは、心の葛藤が多いからです・・・)
それでも、腰を下ろして、沢の水で頭と身体を冷やし
持ち合わせていた、高カロリーゼリー・アミノバイタル顆粒・ナッツ類・ドライフルーツ等をほぼドーピング気味に掻きこむと、体力と気力も少し復活してくる。。。
「とにかく登ろうか」

【AM11:40 天狗原分岐】
牛歩戦術なみの速度で山道を登り、ようやく天狗原分岐に到着。
コースタイム的には槍沢から2時間40分のところ、2時間50分なのでほぼ予定通りなのだが
大曲から天狗原分岐だけで1時間40分を要した。
「この区間が一番キツかった・・・」

最後の水場に到着。
暑さでバテバテだった身体に、ここの水は最高にうまかった。
雪解け水のため、かなり冷たい。
ここで登る気力が “20パーセント” ほどUPした。

途中の雪渓歩き、幅はわずか20mほど。
ただ、もし足を滑らしたら雪渓の切れ間から沢に落ちて大変なことになると思う、油断禁物。
雪渓を歩いたのは、ここともう1ヵ所だけ。今年はこれだけの猛暑で雪も少ないのだろう。
【PM12:50】
苦しんだ槍沢からの登り、槍沢小屋出発から4時間。。。
ようやく

「槍の穂先が見えた~!」
道中、なかなか見ることができなかった槍の穂先が目の前に突然姿をあらわす。
一気にテンションとやる気が復活し、ここで登る気力が “100パーセント” MAXに達した。
(単純だが、槍の穂先はその形といい風貌といい、何か特別なインパクトを感じることができる)

槍ヶ岳山頂を眺めながらの登り、気持ち足取りが軽くなったような気もする。
しかし空気の薄さか、疲労か、暑さのためか、登山道を上がる息は荒くなる。
横尾からの長い登りで、標高はかなり稼いでいるはずだ。

【PM13:10 播隆窟】
槍ヶ岳初登はん・開山をなしとげた念仏行者播隆がそのつど利用した岩屋。
播隆行者は5回槍ヶ岳登山したが、天保五年(1834)の第四回登山の時は、
この岩屋で五十三日間も篭り、念仏を唱えた。 (播隆/1786~1840)
・・・と看板に書いてある。

ここまで登ってくると、もう槍の真下。 山の全容が見えてくる。
そして今日、宿泊予定の殺生ヒュッテももうすぐそこ。

【PM13:50 殺生ヒュッテ 到着】
クタクタになりながらも、ようやく殺生ヒュッテに到着。
朝5:30に徳沢を出発してからここまで8時間20分もかかった。
自分の行動計画表を見直してみると、徳沢出発6:00 殺生ヒュッテ到着14:00なので
ほぼ予定通り!
しかし、この日の暑さで思っていたよりもかなり体力を消耗していた。
(机上で計画立てるのと、実際に登るのって全然違いますね・・・)
殺生ヒュッテでは、とりあえず遅い昼飯をいただく。
重い荷物おろして登山靴脱いで、うどんをすするのは至福の喜び。

たぶん、この時点ではグルメ雑誌に載っているどこのうどんより旨く感じる
うどんを食べながら、テントの受付もついでにお願いする。
テント一張り @1000円
天水1リットル @200円
チップトイレ @100円

槍の真下の特等席に “我が家” 完成
予定ではこのあと、山頂を目指すつもりだが
「そんな体力残っているのか!?」

槍ヶ岳 標高3180m
槍ヶ岳は北アルプス南部にある標高3180mの山、日本で5番目に高い山である。
名前の如く天に槍を衝く形が特徴的な高山であり、その形から「日本のマッターホルン」とも言われる。
山域は中部山岳国立公園に指定されており、日本百名山のひとつ。
そのピラミダルな山容にふさわしく、東西南北に東鎌・西鎌・槍穂高・北鎌と四方に尾根を伸ばし、沢は東西に槍沢・南西に槍平・北西の千丈沢、北東に天丈沢の四沢が伸びている。
登山者でにぎわい、穂高岳などと共に多くの登山者の憧れの的となっている。
(引用文)
【2日目 後半】

テントでコーヒーを飲みつつ、今後の予定を考える。
当初の予定では、このあと山頂に登り、また殺生ヒュッテまで下りてきてテン泊。
明日の朝、再度頂上に上がり、御来光を拝む。
つまりは今日・明日と2回頂上を踏む予定にしていた。
少し休むと体力も回復してきたので、とりあえず必要最小限のものをアタックザックに詰めて山頂に向かうことにする。

【PM16:00】
山頂を目指すために殺生ヒュッテを出発。
つづら折の登山道を槍ヶ岳山荘に向けて上がっていく。
軽くなったザックのおかげで、なんだかスイスイと登っていける。
体調も良く、呼吸も全然苦しくない。ここまでの登りに苦しんでいたのが嘘のようだ。

【PM16:40 槍ヶ岳山荘】
槍ヶ岳山荘に到着。
頂上直下に建つ大きな山小屋。私も以前登った時に一回宿泊したことがある。
定員は400名ということだが、人気の山小屋だけに先週の3連休には混雑でおぞましい事になっていたと思う。この日も多くの登山客で賑わっていた。
ここにはもちろん、テント場もある。
多くの人がここを目指して上がってくる人気のテン場。
私は最初から殺生ヒュッテに張る予定だったが、テン場としては、やはりこちらのほうが先に一杯になるそうだ。幕営数はおよそ40張り。

山荘からテン場の様子が見えた。
見晴らしは良さそうだが、なんかスゴイところにある。
(夜、寝ぼけてテントの外に出たらころがり落ちそうだな・・・)
設置スペースはどの区画も狭そう、風が強い日は大変そうだし(言い訳)
そもそも私にはここまでテントかついで上がる気力が無かった。。。

【PM17:00】
準備を整え山頂に向けて出発。
ヘルメットは槍ヶ岳山荘でレンタルした @500円
ここからは急な岩登り。 (安全の為にヘルメットはあったほうがいいですね。)
混雑時には大変な渋滞になるそうだが、この日は日曜日の夕方のためか
頂上に向かう人の数は少なかった。
さあ、いよいよ山頂へ!

急な斜面を案内の矢印にそって登り

鎖をつたい上がって行く

登っていく途中で “小槍” が見える。
間近でみるとすごい迫力!まちがってもあの上でアルペン踊りをおどる気にはならない。
そもそもクライミングの熟練者しか小槍のてっぺんまで行けないだろう。

梯子や岩に打ち付けられたホールドを使い

最後の2連梯子

この梯子を上がると・・・

槍ヶ岳山頂に到着!
わずか20分の山頂アタックだが、この上ない充実感。
山頂はまさに、天を衝く槍の先端のようだ。
流れる雲がその手でつかめるような感じで、まるで雲上の聖地にいるような気分になる。

【PM17:20 槍ヶ岳山頂】
朝5時半に徳沢を出発して、およそ12時間後に山頂に到達。
ここにたどり着くまでの長い時間、暑さと重い荷物に耐えた苦労が全て吹っ飛ぶ。
雲も晴れてきて、景色も最高。

頂上からは、殺生ヒュッテから登ってきた道も見渡せる。
「た、高い・・・」

小学6年生11歳の時に初めて登頂して以来、36年ぶり2回目の登頂。
山頂の広さは畳20帖ほど。
混雑していたら足の踏み場もないくらいだが、この時点で山頂には5人ほどしか居なかった。
皆さんソロの方らしいので、みんなでかわりばんこに写真撮影。

この時間で下からあがってくる人も少ないため、ゆっくりと山頂から景色を眺めることが出来た。

昨年歩いた、常念・大天井・燕岳の縦走路が見えた。
1年前はあそこから、この山頂を眺めていた事を思うと感慨深い
と同時に、燕岳からの表銀座コースももう一度来て見たいと思った。
残念ながら穂高岳方面はガスっていて見る事が出来なかった。

【PM18:00】
山頂には20分ほど滞在していた。下りも滑落に気をつけて、慎重に3点支持でゆっくりと下りる。
槍ヶ岳山荘におりてきた時にはだいぶ日も傾いていた。
槍ヶ岳山荘でヘルメットを返却し、登頂記念のお土産を買って帰る。
下に見える殺生ヒュッテまで戻らないといけない。

【PM19:00 夕食】
殺生ヒュッテまで下りてきて、小屋で夕食のカレーライスを頂く。
この日はヒュッテも空いていて、屋外のテラスで夕暮れに染まる景色を見ながらの
ささやかな晩餐。 食事は簡単でも、景色込みで最高の贅沢。
この山行を通して、山小屋で食事をとれる時は小屋の食事をいただくようにしていた。
(もちろん食料も持参してきているが、どうもフリーズドライ飯では満足できないみたい)

【PM21:00 就寝】
テントに戻り、就寝。
昨夜からの寝不足と登山の疲労で今日は良く眠れそう。
一応、明日の朝は日の出前に出発し、槍ヶ岳山荘で御来光を拝む予定であったが
横になるなり、眠りに落ちた。。。

夜明け前のテント場
【3日目】
今回の登山も最終日。
朝3時に起床、御来光を槍ヶ岳山荘で拝み
そのあともう一回、槍ヶ岳の山頂にあがるかどうか検討する。
身体を暖めるためにコーヒーを入れて飲んでいた。
まわりはまだ真っ暗で、少し寒い。
やっぱりシュラフの温もりが恋しくなって、もう一度シュラフにもぐりこむ。
「昨日登っているし、もういいか・・・」
(ソロなので、このあたりは自由気ままである。そもそもそんなにストイックな方では無い)
予定変更、あっさりと山頂に行くのをあきらめた。

【AM4:30】
テントの中でモゾモゾしていると、少し明るくなってきた。
雲も多く、それほど綺麗な御来光も期待できなそうだ。
それ自体は残念だが、綺麗な御来光を見れるなら山頂に行かなかったことを後悔していると思う。

殺生ヒュッテのテラスから、朝焼けを眺める。この日は雲海も少し控えめ。
しかし景色も良く、爽やかな朝。澄んだ空気を胸一杯に吸い込むと眠気も覚めてきた。
雲海の彼方に富士山がはっきりと見えた。

【AM5:00 朝食】
山頂に行く事をやめたので、時間的にも精神的にも余裕が出来た。
朝飯をゆっくりと頂く。といってもフリーズドライ飯、しかもまたカレー。

フリーズドライ飯に文句言ってましたが、決して味は悪くない。
調理は簡単、重量も軽いので山に携帯するにはとっても便利。
しかも野菜たっぷりで味もなかなか、作ってるメーカーさんの努力には頭下がります。

食事が終わるころには、ほぼ日があがっていた。
今日も天気は良さそう。
このあとは例によってゆっくり撤収。
せっかく重く辛い思いしてここまで担ぎ上げたテントなので、景色見ながらゆっくり過ごす事にする。
のんびりしていたら、このまま帰るのが惜しくなってきた。
(日にちに余裕があれば、このテントをベースキャンプにあちこち登れるんだけどな~)

【AM7:30 殺生ヒュッテ出発】
重い腰を上げて、ようやく撤収完了。
テント場の前を学生さんの団体が通過していく、小屋前も登山客で賑わしくなってきた。
今日は上高地への下山を残すのみ、下るだけだが約20キロのロングトレイル。
少し、気合を入れなおして出発。

【AM8:20】
振り返ると槍ともお別れ。

あとはひたすら、元来た道を下っていく。
背中に「槍」の印の入ったつなぎを着た山小屋のスタッフさんが私の前を先行して降りていく。

【AM9:20】
“大岩”前。昨日は疲れて眺める余裕が無かった景色を楽しみながら下りる。
とここで少しアクシデント。
先行していた山小屋のスタッフに前を止められる。
どうやら要救助者が出て、これからヘリによる救助が行われるようだ。

すさまじい音を立てて、救助用のヘリが近づいて来る。
上空でホバリングしながら、隊員一名がロープを使って垂直降下。
救助隊員とスタッフさんが要救助者の身体を確保し、隊員の身体と結びつけると、
要救助者は隊員とともにヘリに引き上げられていく。

無事、要救助者をヘリに収容。
この間わずか10分ほど。
目の前で行われた救助活動の迫力と、救助隊員たちの迅速な行動に感動しつつも
改めて登山に危険は付き物と痛感させられた。
後から聞いた話だが、この時の要救助者は骨折をしたらしい。
この日の暑さと疲労で、足を滑らして転倒か滑落でもしたのだろうか?
遠目から見ていた限りでは、本人も自力で動いていたので大した怪我でないことを願うばかりだ。

“大岩沢”
景色ばかり見て転んでもいけないので、足元に注意しながら山道を下っていく。
やはり、ここらへんから気温も上がり暑い。

“槍見岩”
槍見岩とは、正面の尖った山のことかと思っていたが
こちらは“カブト岩”という名前がついていることを知った。
その尖がり度は槍ヶ岳以上。クライミングで登る人もいるのだろうか?

【AM11:40 槍沢ロッジ】
槍沢到着。
救助活動による足止めなどあったが、ここまで順調に下りてくる。
槍沢小屋の前に置いてある望遠鏡。のぞくと頂上に立っている人の姿まで確認できる。

肉眼で見ると木々の間から、ちっちゃく槍の穂先が見えるだけ。
(ホント、昨日はここから遠かったもんな・・・)

【PM12:00 昼食】
槍沢ロッジで昼食。 メニューはやっぱり、うどん。
私の中ではカレーとうどんは山小屋飯の定番。しかも、この日は冷やしうどん。
「つめたくて美味しい~!」
熱中症対策?で冷たくてしょっぱいスープを最後の一滴まで飲み干した。

槍沢までおりてくれば、あとはなだらかな下り道が待っているだけ。
標高を下げた分、気温が上がってきて暑い。
何度か、冷たい清流に飛び込みたい気持ちになる。

【PM14:30 横尾山荘】
横尾山荘に到着。
距離が長く疲れてきたので、こまめに休憩をとる。

ここまで下りて来て、この山行で初のコーラ。
熱中症対策でポカリスエットばかり飲んでいたので、炭酸が喉にしみて美味い。
ペプシが帽子とサングラスと同色だったので一緒に写真を撮った。
登山で使うサングラスとグローブは、ダイエットの為に乗っている自転車(ロードバイク)と兼用。
(自転車もサボっているので、相変わらず体重は落ちてないけど・・・)

“横尾大橋”
休憩がてら周辺を散策。
この橋を渡ると涸沢方面。その先には穂高連峰への登山道が続いている。
涸沢ももう30年以上訪れていない、近いうちにまた来よう。

【PM15:50 徳沢】
徳沢園に到着。
昨日の出発地点まで戻ってきた。殺生ヒュッテ出発からここまで8時間20分。
前日の徳沢→殺生ヒュッテの登りが同じ8時間20分かかったので、なんと登りと同タイム!
いかにのんびりと下りてきたのかがわかる。 それと休憩多すぎ。

と言いながら、ここでもちゃんと栄養補給するんだけどね(笑)
見返したら、後半は食べ物ネタばかりですね・・・(汗
もう登山というより、レジャー感が出てきている。
徳沢から、終点・河童橋までは時間にしてあと2時間の距離。
上高地から出る最終のバスは18時45分。(注・夏シーズンの運行時間です)
時間的にはまだまだ余裕がある。

【PM17:50 河童橋 到着】
ゴールの河童橋に到着!
とにかく長い下りだった。
最後はヘロヘロになりながらも、なんとか河童橋に到着。
もう日が落ちて、いつもは観光客で賑わっている河童橋も閑散としている。
密かに楽しみにしていた、河童橋のたもとにある土産屋のコロッケも
すでに閉店状態で品切れしていたので少し凹む・・・

それでも、河童橋から眺める穂高連峰は綺麗だ。
今回の槍ヶ岳登山の計3日間。よく歩いたし、こうして無事に辿り着く事が出来た。
なんともいえない充足感
(他に、疲労感・空腹感・足裏の靴ズレの痛みなどいろいろあったが)
夕暮れの山の景色を見ながら、
「なんも言えねぇ~」
一人無言で感動に浸る。。。

【PM18:00 上高地バスターミナル】
最終の沢渡・新島々駅行きのバスに乗り込む、乗客は私含めて数人。
この後は安曇野の家で一泊し、翌日に四国に帰宅した。
【編集後記】
今回は久しぶりの夏登山。しかも例年に無い異常な酷暑の中での登山になった。
熱中症対策は万全にしてきたものの、暑さにバテたのは事実だった。
当初は表銀座ルートからの強行日程による登山も考えたが、
自分の体力と実力を考えて、上高地ルートにして正解だった。
槍ヶ岳への登山ルートの中でも一般的に初級者コースとされる上高地ルートだが、
片道だけで20kmを超えるロングトレイルを侮ってはいけなかった。
それでも、前日の徳沢泊と、ひとつ手前の殺生ヒュッテでのテン泊などで
山行の負荷を減らしていたので無事に山頂まで辿り着く事が出来た。
日程的にも、前週の3連休をかわして、土日では無く、日曜・月曜で登ったため
混雑なく歩く事ができ、山頂からの景色もゆっくりと堪能することができた。
混雑時は山荘から山頂への往復だけで3時間かかると聞いていたが、
あんなところで3時間も待たされるのは狂気の沙汰である。
天気には恵まれたが、暑さにも嫌というほど恵まれた登山だった。

子供のとき以来の槍ヶ岳登山だったが、
この歳になって改めて登ってみて、槍ヶ岳の魅力を発見することができた。
是非、今度は別のルートで、違う景色の槍ヶ岳を眺めながら登りたいと思った。
「槍ヶ岳、また来よう!」
6月の燕岳登山に続いて、7月に槍ヶ岳に登りにいく機会が出来たので
登山記録をUPしました。
今年の夏の登山は槍ヶ岳に目標を定めていたが、問題はどのコースで登るか。
槍ヶ岳に登るには何通りかの登山ルートがあるが
当初は燕岳、大天井岳を経由していく「表銀座縦走コース」を想定していた。
表銀座ルートは、安曇野の家から登山口の中房温泉へのアクセスも良く
登りなれた燕岳、昨年テント泊できなかった大天井岳を経由していく非常に贅沢なコース。
私も小学生のときに一度は辿ったルートだ。
しかし計画段階で
・仕事の都合(表銀座縦走コースは最低、丸3日は必要)
・体力的な調整の失敗(正直いったらトレーニングのサボり・・・)
・登山の安全性(はやく言えばテント背負って縦走コースを歩ききる自信無し)
を考慮し、最終的には
上高地から槍ヶ岳に登る「上高地コース」に決定。
【1日目】

【PM13:30 沢渡駐車場】
前日夜に地元四国を出発し、翌日の昼過ぎにようやく沢渡駐車場に到着。
この日は土曜日だったが、上高地から登山する人は早朝出発の人が多いので
上高地行きのバスは私を含めて数人と非常にすいていた。

途中、バスの車窓から大正池を眺める。上高地のバスターミナルももうすぐ。

【PM14:30 上高地バスターミナル】
上高地のバスターミナルに到着。
バスターミナル横にあるインフォメーションセンターで登山届けを提出する。
すでに大きなザックを背負っている登山者の姿は少ないが、軽装の観光客の方はいっぱい。
今年の暑さのせいか、やはり避暑地の上高地は人気があるようだ。

【PM14:50 河童橋】
ここが今回の登山のスタート地点。
上高地も9年ぶりに訪れたが今年は特に暑く、この日は上高地でも30℃近くあった。
「半袖、短パンでも暑い・・・」

しかし河童橋から見る、穂高連峰の景色はいつ見ても素晴らしい。
梓川の水の綺麗さにわずかばかりの涼をもらい、歩き始める。

ここからしばらくは整備された遊歩道を歩く。
河童橋から30分ほどで上高地観光スポットのひとつ、明神池の分岐に到着。
この日は時間に余裕があるので立ち寄ることにする。

【PM15:30 穂高神社奥宮 明神池】
明神橋を渡り、程なく歩くと明神池に到着。

拝観料300円はかかるが、一見の価値あり。
正面にそびえる明神岳、澄んで透明な水面、立ち枯れした木々。
なんとも神々しくて神秘的な雰囲気が漂う池です。
ここで今回の登山の無事を祈り、御祈祷。
日本的でインスタ映え?するのか外国人観光客の方々があちらこちらで写真撮影していた。

明神池から先は徐々に観光客も減っていく。
道はまだまだ平坦。明日からの本格的な登山道への良い準備運動。
今日の泊まりは、この先の徳沢園か、出来たら横尾山荘まで行く予定で歩いていた。

徳沢ロッジに到着。
ここは宿泊はもちろん、宿泊者以外でも外来入浴が出来るお風呂付。

徳沢ロッジの前を通り過ぎると、徳沢キャンプ場が見えてきた。
すでに色とりどりのテントが並び、けっこう賑わっている。

【PM16:50 徳沢園 到着】
明神池で寄り道をしていたので、この時点ですでに夕方の5時。
次のキャンプ地、横尾山荘まではここから1時間の距離だが
ゆっくり設営して、のんびりしたかったのでここで宿泊することに決定。

下が草地の林間キャンプ場。
山のテン場とは違い、キャンプ場感満載。
子供が成長してから、ここ何年かはキャンプにも行っていないので。
「こんなところでキャンプするの何年ぶりかな~?」

テントは昨年、山用に購入した、ファイントラックのカミナドーム2
安心と信頼のmade in Japan、高性能で軽量のため迷ったあげくに二人用を購入。
一人で使うと広々で快適。片付け下手でテントの中でぐちゃぐちゃに荷物広げる私にはピッタリ・・・(汗

【PM18:00 夕食】
テント泊だが、徳沢園で夕食。
岩魚定食 @1600円。
テント客でも夕方5時までに予約すれば、徳沢園の喫茶スペースで食事可能。
徳沢園に着いたのが5時直前だったので、すぐに予約していた。
ついた時点でキャンプ飯する気 “0”ゼロ!
岩魚定食を美味しくいただき、その後は徳沢ロッジでお風呂につかる。
そして寝るのは牧草地の心地いいキャンプ場。
「もう、すっかりリゾート気分だな~」
そう、リゾート気分で幸せなのはこの日までで
明日から地獄の灼熱登山が待っているんだけどね。

本日の目的地 殺生ヒュッテ テント場
【2日目】
槍ヶ岳登山、2日目の朝からです。
昨夜は10時ごろ就寝したにもかかわらず、夜中の1時に目が覚める。
久々のテント泊。寝慣れないのか、気持ちが高ぶっているのか
それ以降は目が冴えて、なかなか眠れない。
この日は星空が綺麗だったので、テントから顔を出して星を眺めていた。
「どうせ眠れないなら、早く出発するか」
まわりに迷惑がかからぬよう3時過ぎから夜食ならぬ朝食のラーメンを食べる。
明るくなる前に出発しようかと思ったが、片付けと撤収に手間どり結局、夜が明けてしまった。

【AM5:30 徳沢園 出発】
どんだけ撤収遅いのか・・・(ここらへんは今後の課題ですね。)
それでも徳沢園の朝はみんなゆっくりしていて、まだ行動している人は少なかった。
日程的にこれから上高地に下る人が多いのだろう。

昇りかけの太陽を浴びる明神岳が幻想的で綺麗だ。
まだ朝一で涼しくて快適。日が昇って暑くなる前になるべく距離を稼いでおきたいところ。

【AM6:10 横尾山荘】
徳沢園から40分ほどで横尾山荘に到着。
立派な山荘、トイレも有料だがとっても綺麗。テント場も広いし、ここでのキャンプでも全然良かった。
上高地から片道3時間かかる上に、各登山ルートの分岐点になっているため
ここに居る人たちはほとんど登山者たちだろう。皆、朝の支度を始めていた。

横尾大橋。こちらを渡ると、涸沢・穂高方面。
(秋にはここから涸沢や奥穂高岳もいいな~)

上高地からここまで11km、ここから槍ヶ岳まで11km。ちょうど中間地点?
「ホントか!?槍ヶ岳、以外と近いじゃん」
(これがそもそもの間違い・・・)

横尾から槍ヶ岳と蝶ヶ岳の分岐。
“ここから先は登山の装備が必要です” の表示。ここからはだんだんと山道になっていく。
ここで、ダブルストック・登山用高機能タイツ・熊鈴を装着、準備万端。
熊鈴は昨年、燕岳で熊と遭遇してからつけるようにしている。
(熊さんの生活圏内にお邪魔する訳だし礼儀というか、こちらとしても絶対に出くわしたくないもんな)
ここから右方向に行けば蝶ヶ岳。
上高地→蝶ヶ岳→常念岳の縦走もいいコースそうですね。

【AM7:30 一の股】
途中、梓川の支流をまたぐ橋をわたると一の股。
その先5分ほどで、さらに立派な橋を渡ると二の股の標識。

ここまでは木陰のトンネルの中、梓川支流の美しい流れとせせらぎを聞きながらの快適なコース。

【AM8:00 槍沢ロッジ】
ここは、宿泊・食事そしてこの先のババ平キャンプ場の受付もしてくれる。
休憩して涼や軽食をとる人も多かったが、この日は日曜日のため
休んでいる人の多くは槍ヶ岳方面からの下山者らしかった。
ここでは朝食がわりのパンを購入、無料の水を補給して50分ほど休憩。

【AM9:20 槍沢ババ平野営場】
ババ平野営場は樹林帯を抜けたところにあった。
このあたりから急に日差しが強くなってくる。
テントからの見晴らしは良さそうだけど、日差しを浴びてテントの中はとても暑そう。
一見テントを張れるスペースは少なそうだったけど、この先の沢沿いにも砂地のスペースがあった。
ネット上で見た、以前のここのトイレは使うのを躊躇うぐらい強烈なトイレだったが・・・現在は

「なんと言うことでしょ~う!」
と、ビフォーアフターのナレーションが
聞こえてくるぐらい綺麗になっていた(笑)
もちろんチップトイレ。登山道のトイレが綺麗になっていくのは非常にありがたいので
個人的にチップトイレは大賛成です。
特に北アルプスは登山道と山小屋の整備が進んでいて、登山者からの人気も理解できる。

景色が開けてくると、ここから徐々に登りもきつくなってくる。
地図を見るとここから、大曲まで1時間40分。さらにその先の天狗原分岐まで1時間。
「休憩いれても3時間か、けっこうあるな・・・」 と思いつつ登りはじめる。
全体的な登りの傾斜はそれほど急ではないが、じわじわと高度を上げる登りに苦労する。
そして何より暑い!!
一歩進むごとに汗が噴き出し、身体が熱くなってくる。この日は天気が良いぶん日差しも強烈だ。
荷物の重さと暑さが一歩一歩、ボディーブローのように効いてくる。
そして、大曲を通過するあたりで完全に足が止まる・・・
(この部分、文字が多いのは、すでに写真を撮る元気もなくなっていたためです・・・)
熱中症を疑うが、水分・塩分・補給食と対策は十分にしてきた。
熱中症特有の症状も出てきてないし、食料もしっかり取っているのでハンガーノックでも無い。
思い当たるのは単なる疲労と寝不足。
(要はトレーニングさぼったツケが廻ってきただけである。)
兎に角、休憩をとる為に沢の近くで腰を下ろす。残念ながらここに日陰は無い。
疲労と暑さにグッタリしながら、少し弱気になる。
「一回、槍沢まで下りて、テント泊用の荷物減らして登りなおすか」
「いっそ槍沢小屋で泊まって、明日帰っちゃおーか」
もう撤退を考えるほど、登る気 “0”ゼロ である。
(この部分。文字が多いのは、心の葛藤が多いからです・・・)
それでも、腰を下ろして、沢の水で頭と身体を冷やし
持ち合わせていた、高カロリーゼリー・アミノバイタル顆粒・ナッツ類・ドライフルーツ等をほぼドーピング気味に掻きこむと、体力と気力も少し復活してくる。。。
「とにかく登ろうか」

【AM11:40 天狗原分岐】
牛歩戦術なみの速度で山道を登り、ようやく天狗原分岐に到着。
コースタイム的には槍沢から2時間40分のところ、2時間50分なのでほぼ予定通りなのだが
大曲から天狗原分岐だけで1時間40分を要した。
「この区間が一番キツかった・・・」

最後の水場に到着。
暑さでバテバテだった身体に、ここの水は最高にうまかった。
雪解け水のため、かなり冷たい。
ここで登る気力が “20パーセント” ほどUPした。

途中の雪渓歩き、幅はわずか20mほど。
ただ、もし足を滑らしたら雪渓の切れ間から沢に落ちて大変なことになると思う、油断禁物。
雪渓を歩いたのは、ここともう1ヵ所だけ。今年はこれだけの猛暑で雪も少ないのだろう。
【PM12:50】
苦しんだ槍沢からの登り、槍沢小屋出発から4時間。。。
ようやく

「槍の穂先が見えた~!」
道中、なかなか見ることができなかった槍の穂先が目の前に突然姿をあらわす。
一気にテンションとやる気が復活し、ここで登る気力が “100パーセント” MAXに達した。
(単純だが、槍の穂先はその形といい風貌といい、何か特別なインパクトを感じることができる)

槍ヶ岳山頂を眺めながらの登り、気持ち足取りが軽くなったような気もする。
しかし空気の薄さか、疲労か、暑さのためか、登山道を上がる息は荒くなる。
横尾からの長い登りで、標高はかなり稼いでいるはずだ。

【PM13:10 播隆窟】
槍ヶ岳初登はん・開山をなしとげた念仏行者播隆がそのつど利用した岩屋。
播隆行者は5回槍ヶ岳登山したが、天保五年(1834)の第四回登山の時は、
この岩屋で五十三日間も篭り、念仏を唱えた。 (播隆/1786~1840)
・・・と看板に書いてある。

ここまで登ってくると、もう槍の真下。 山の全容が見えてくる。
そして今日、宿泊予定の殺生ヒュッテももうすぐそこ。

【PM13:50 殺生ヒュッテ 到着】
クタクタになりながらも、ようやく殺生ヒュッテに到着。
朝5:30に徳沢を出発してからここまで8時間20分もかかった。
自分の行動計画表を見直してみると、徳沢出発6:00 殺生ヒュッテ到着14:00なので
ほぼ予定通り!
しかし、この日の暑さで思っていたよりもかなり体力を消耗していた。
(机上で計画立てるのと、実際に登るのって全然違いますね・・・)
殺生ヒュッテでは、とりあえず遅い昼飯をいただく。
重い荷物おろして登山靴脱いで、うどんをすするのは至福の喜び。

たぶん、この時点ではグルメ雑誌に載っているどこのうどんより旨く感じる
うどんを食べながら、テントの受付もついでにお願いする。
テント一張り @1000円
天水1リットル @200円
チップトイレ @100円

槍の真下の特等席に “我が家” 完成
予定ではこのあと、山頂を目指すつもりだが
「そんな体力残っているのか!?」

槍ヶ岳 標高3180m
槍ヶ岳は北アルプス南部にある標高3180mの山、日本で5番目に高い山である。
名前の如く天に槍を衝く形が特徴的な高山であり、その形から「日本のマッターホルン」とも言われる。
山域は中部山岳国立公園に指定されており、日本百名山のひとつ。
そのピラミダルな山容にふさわしく、東西南北に東鎌・西鎌・槍穂高・北鎌と四方に尾根を伸ばし、沢は東西に槍沢・南西に槍平・北西の千丈沢、北東に天丈沢の四沢が伸びている。
登山者でにぎわい、穂高岳などと共に多くの登山者の憧れの的となっている。
(引用文)
【2日目 後半】

テントでコーヒーを飲みつつ、今後の予定を考える。
当初の予定では、このあと山頂に登り、また殺生ヒュッテまで下りてきてテン泊。
明日の朝、再度頂上に上がり、御来光を拝む。
つまりは今日・明日と2回頂上を踏む予定にしていた。
少し休むと体力も回復してきたので、とりあえず必要最小限のものをアタックザックに詰めて山頂に向かうことにする。

【PM16:00】
山頂を目指すために殺生ヒュッテを出発。
つづら折の登山道を槍ヶ岳山荘に向けて上がっていく。
軽くなったザックのおかげで、なんだかスイスイと登っていける。
体調も良く、呼吸も全然苦しくない。ここまでの登りに苦しんでいたのが嘘のようだ。

【PM16:40 槍ヶ岳山荘】
槍ヶ岳山荘に到着。
頂上直下に建つ大きな山小屋。私も以前登った時に一回宿泊したことがある。
定員は400名ということだが、人気の山小屋だけに先週の3連休には混雑でおぞましい事になっていたと思う。この日も多くの登山客で賑わっていた。
ここにはもちろん、テント場もある。
多くの人がここを目指して上がってくる人気のテン場。
私は最初から殺生ヒュッテに張る予定だったが、テン場としては、やはりこちらのほうが先に一杯になるそうだ。幕営数はおよそ40張り。

山荘からテン場の様子が見えた。
見晴らしは良さそうだが、なんかスゴイところにある。
(夜、寝ぼけてテントの外に出たらころがり落ちそうだな・・・)
設置スペースはどの区画も狭そう、風が強い日は大変そうだし(言い訳)
そもそも私にはここまでテントかついで上がる気力が無かった。。。

【PM17:00】
準備を整え山頂に向けて出発。
ヘルメットは槍ヶ岳山荘でレンタルした @500円
ここからは急な岩登り。 (安全の為にヘルメットはあったほうがいいですね。)
混雑時には大変な渋滞になるそうだが、この日は日曜日の夕方のためか
頂上に向かう人の数は少なかった。
さあ、いよいよ山頂へ!

急な斜面を案内の矢印にそって登り

鎖をつたい上がって行く

登っていく途中で “小槍” が見える。
間近でみるとすごい迫力!まちがってもあの上でアルペン踊りをおどる気にはならない。
そもそもクライミングの熟練者しか小槍のてっぺんまで行けないだろう。

梯子や岩に打ち付けられたホールドを使い

最後の2連梯子

この梯子を上がると・・・

槍ヶ岳山頂に到着!
わずか20分の山頂アタックだが、この上ない充実感。
山頂はまさに、天を衝く槍の先端のようだ。
流れる雲がその手でつかめるような感じで、まるで雲上の聖地にいるような気分になる。

【PM17:20 槍ヶ岳山頂】
朝5時半に徳沢を出発して、およそ12時間後に山頂に到達。
ここにたどり着くまでの長い時間、暑さと重い荷物に耐えた苦労が全て吹っ飛ぶ。
雲も晴れてきて、景色も最高。

頂上からは、殺生ヒュッテから登ってきた道も見渡せる。
「た、高い・・・」

小学6年生11歳の時に初めて登頂して以来、36年ぶり2回目の登頂。
山頂の広さは畳20帖ほど。
混雑していたら足の踏み場もないくらいだが、この時点で山頂には5人ほどしか居なかった。
皆さんソロの方らしいので、みんなでかわりばんこに写真撮影。

この時間で下からあがってくる人も少ないため、ゆっくりと山頂から景色を眺めることが出来た。

昨年歩いた、常念・大天井・燕岳の縦走路が見えた。
1年前はあそこから、この山頂を眺めていた事を思うと感慨深い
と同時に、燕岳からの表銀座コースももう一度来て見たいと思った。
残念ながら穂高岳方面はガスっていて見る事が出来なかった。

【PM18:00】
山頂には20分ほど滞在していた。下りも滑落に気をつけて、慎重に3点支持でゆっくりと下りる。
槍ヶ岳山荘におりてきた時にはだいぶ日も傾いていた。
槍ヶ岳山荘でヘルメットを返却し、登頂記念のお土産を買って帰る。
下に見える殺生ヒュッテまで戻らないといけない。

【PM19:00 夕食】
殺生ヒュッテまで下りてきて、小屋で夕食のカレーライスを頂く。
この日はヒュッテも空いていて、屋外のテラスで夕暮れに染まる景色を見ながらの
ささやかな晩餐。 食事は簡単でも、景色込みで最高の贅沢。
この山行を通して、山小屋で食事をとれる時は小屋の食事をいただくようにしていた。
(もちろん食料も持参してきているが、どうもフリーズドライ飯では満足できないみたい)

【PM21:00 就寝】
テントに戻り、就寝。
昨夜からの寝不足と登山の疲労で今日は良く眠れそう。
一応、明日の朝は日の出前に出発し、槍ヶ岳山荘で御来光を拝む予定であったが
横になるなり、眠りに落ちた。。。

夜明け前のテント場
【3日目】
今回の登山も最終日。
朝3時に起床、御来光を槍ヶ岳山荘で拝み
そのあともう一回、槍ヶ岳の山頂にあがるかどうか検討する。
身体を暖めるためにコーヒーを入れて飲んでいた。
まわりはまだ真っ暗で、少し寒い。
やっぱりシュラフの温もりが恋しくなって、もう一度シュラフにもぐりこむ。
「昨日登っているし、もういいか・・・」
(ソロなので、このあたりは自由気ままである。そもそもそんなにストイックな方では無い)
予定変更、あっさりと山頂に行くのをあきらめた。

【AM4:30】
テントの中でモゾモゾしていると、少し明るくなってきた。
雲も多く、それほど綺麗な御来光も期待できなそうだ。
それ自体は残念だが、綺麗な御来光を見れるなら山頂に行かなかったことを後悔していると思う。

殺生ヒュッテのテラスから、朝焼けを眺める。この日は雲海も少し控えめ。
しかし景色も良く、爽やかな朝。澄んだ空気を胸一杯に吸い込むと眠気も覚めてきた。
雲海の彼方に富士山がはっきりと見えた。

【AM5:00 朝食】
山頂に行く事をやめたので、時間的にも精神的にも余裕が出来た。
朝飯をゆっくりと頂く。といってもフリーズドライ飯、しかもまたカレー。

フリーズドライ飯に文句言ってましたが、決して味は悪くない。
調理は簡単、重量も軽いので山に携帯するにはとっても便利。
しかも野菜たっぷりで味もなかなか、作ってるメーカーさんの努力には頭下がります。

食事が終わるころには、ほぼ日があがっていた。
今日も天気は良さそう。
このあとは例によってゆっくり撤収。
せっかく重く辛い思いしてここまで担ぎ上げたテントなので、景色見ながらゆっくり過ごす事にする。
のんびりしていたら、このまま帰るのが惜しくなってきた。
(日にちに余裕があれば、このテントをベースキャンプにあちこち登れるんだけどな~)

【AM7:30 殺生ヒュッテ出発】
重い腰を上げて、ようやく撤収完了。
テント場の前を学生さんの団体が通過していく、小屋前も登山客で賑わしくなってきた。
今日は上高地への下山を残すのみ、下るだけだが約20キロのロングトレイル。
少し、気合を入れなおして出発。

【AM8:20】
振り返ると槍ともお別れ。

あとはひたすら、元来た道を下っていく。
背中に「槍」の印の入ったつなぎを着た山小屋のスタッフさんが私の前を先行して降りていく。

【AM9:20】
“大岩”前。昨日は疲れて眺める余裕が無かった景色を楽しみながら下りる。
とここで少しアクシデント。
先行していた山小屋のスタッフに前を止められる。
どうやら要救助者が出て、これからヘリによる救助が行われるようだ。

すさまじい音を立てて、救助用のヘリが近づいて来る。
上空でホバリングしながら、隊員一名がロープを使って垂直降下。
救助隊員とスタッフさんが要救助者の身体を確保し、隊員の身体と結びつけると、
要救助者は隊員とともにヘリに引き上げられていく。

無事、要救助者をヘリに収容。
この間わずか10分ほど。
目の前で行われた救助活動の迫力と、救助隊員たちの迅速な行動に感動しつつも
改めて登山に危険は付き物と痛感させられた。
後から聞いた話だが、この時の要救助者は骨折をしたらしい。
この日の暑さと疲労で、足を滑らして転倒か滑落でもしたのだろうか?
遠目から見ていた限りでは、本人も自力で動いていたので大した怪我でないことを願うばかりだ。

“大岩沢”
景色ばかり見て転んでもいけないので、足元に注意しながら山道を下っていく。
やはり、ここらへんから気温も上がり暑い。

“槍見岩”
槍見岩とは、正面の尖った山のことかと思っていたが
こちらは“カブト岩”という名前がついていることを知った。
その尖がり度は槍ヶ岳以上。クライミングで登る人もいるのだろうか?

【AM11:40 槍沢ロッジ】
槍沢到着。
救助活動による足止めなどあったが、ここまで順調に下りてくる。
槍沢小屋の前に置いてある望遠鏡。のぞくと頂上に立っている人の姿まで確認できる。

肉眼で見ると木々の間から、ちっちゃく槍の穂先が見えるだけ。
(ホント、昨日はここから遠かったもんな・・・)

【PM12:00 昼食】
槍沢ロッジで昼食。 メニューはやっぱり、うどん。
私の中ではカレーとうどんは山小屋飯の定番。しかも、この日は冷やしうどん。
「つめたくて美味しい~!」
熱中症対策?で冷たくてしょっぱいスープを最後の一滴まで飲み干した。

槍沢までおりてくれば、あとはなだらかな下り道が待っているだけ。
標高を下げた分、気温が上がってきて暑い。
何度か、冷たい清流に飛び込みたい気持ちになる。

【PM14:30 横尾山荘】
横尾山荘に到着。
距離が長く疲れてきたので、こまめに休憩をとる。

ここまで下りて来て、この山行で初のコーラ。
熱中症対策でポカリスエットばかり飲んでいたので、炭酸が喉にしみて美味い。
ペプシが帽子とサングラスと同色だったので一緒に写真を撮った。
登山で使うサングラスとグローブは、ダイエットの為に乗っている自転車(ロードバイク)と兼用。
(自転車もサボっているので、相変わらず体重は落ちてないけど・・・)

“横尾大橋”
休憩がてら周辺を散策。
この橋を渡ると涸沢方面。その先には穂高連峰への登山道が続いている。
涸沢ももう30年以上訪れていない、近いうちにまた来よう。

【PM15:50 徳沢】
徳沢園に到着。
昨日の出発地点まで戻ってきた。殺生ヒュッテ出発からここまで8時間20分。
前日の徳沢→殺生ヒュッテの登りが同じ8時間20分かかったので、なんと登りと同タイム!
いかにのんびりと下りてきたのかがわかる。 それと休憩多すぎ。

と言いながら、ここでもちゃんと栄養補給するんだけどね(笑)
見返したら、後半は食べ物ネタばかりですね・・・(汗
もう登山というより、レジャー感が出てきている。
徳沢から、終点・河童橋までは時間にしてあと2時間の距離。
上高地から出る最終のバスは18時45分。(注・夏シーズンの運行時間です)
時間的にはまだまだ余裕がある。

【PM17:50 河童橋 到着】
ゴールの河童橋に到着!
とにかく長い下りだった。
最後はヘロヘロになりながらも、なんとか河童橋に到着。
もう日が落ちて、いつもは観光客で賑わっている河童橋も閑散としている。
密かに楽しみにしていた、河童橋のたもとにある土産屋のコロッケも
すでに閉店状態で品切れしていたので少し凹む・・・

それでも、河童橋から眺める穂高連峰は綺麗だ。
今回の槍ヶ岳登山の計3日間。よく歩いたし、こうして無事に辿り着く事が出来た。
なんともいえない充足感
(他に、疲労感・空腹感・足裏の靴ズレの痛みなどいろいろあったが)
夕暮れの山の景色を見ながら、
「なんも言えねぇ~」
一人無言で感動に浸る。。。

【PM18:00 上高地バスターミナル】
最終の沢渡・新島々駅行きのバスに乗り込む、乗客は私含めて数人。
この後は安曇野の家で一泊し、翌日に四国に帰宅した。
【編集後記】
今回は久しぶりの夏登山。しかも例年に無い異常な酷暑の中での登山になった。
熱中症対策は万全にしてきたものの、暑さにバテたのは事実だった。
当初は表銀座ルートからの強行日程による登山も考えたが、
自分の体力と実力を考えて、上高地ルートにして正解だった。
槍ヶ岳への登山ルートの中でも一般的に初級者コースとされる上高地ルートだが、
片道だけで20kmを超えるロングトレイルを侮ってはいけなかった。
それでも、前日の徳沢泊と、ひとつ手前の殺生ヒュッテでのテン泊などで
山行の負荷を減らしていたので無事に山頂まで辿り着く事が出来た。
日程的にも、前週の3連休をかわして、土日では無く、日曜・月曜で登ったため
混雑なく歩く事ができ、山頂からの景色もゆっくりと堪能することができた。
混雑時は山荘から山頂への往復だけで3時間かかると聞いていたが、
あんなところで3時間も待たされるのは狂気の沙汰である。
天気には恵まれたが、暑さにも嫌というほど恵まれた登山だった。

子供のとき以来の槍ヶ岳登山だったが、
この歳になって改めて登ってみて、槍ヶ岳の魅力を発見することができた。
是非、今度は別のルートで、違う景色の槍ヶ岳を眺めながら登りたいと思った。
「槍ヶ岳、また来よう!」