2021年9月 剱岳登山

剱岳に登ってきました。
当ブログ恒例の1年ぶり更新。
かねてからの念願だった剱岳に登ってきました。
長く続くコロナウイルスの影響で、数々のスポーツイベントが中止になり、
チケットが当選して楽しみにしていた東京オリンピックの無観客開催など
今年も我慢を強いられる日々・・・
それでも登山に関しては、
7月に身内の登山仲間3人で表銀座縦走からの槍ヶ岳登山(残雪の為、途中撤退)
8月には東京オリンピックの自転車ロードレース観戦の為に静岡県の三国山トレッキングとそれなりに活動してました。
そして9月、コロナワクチンの2回目接種が済んだタイミングで富山県・剱岳へと向う事に。
【1日目】

【AM7:00 扇沢バスターミナル】
お盆から続く長雨、9月に入ってからの秋雨の合間を縫って、
この週末なら!という事で長野県に車で急行。扇沢側から黒部アルペンルートに入る。
(立山黒部アルペンルートは今年で全線開業50周年みたいですね)

扇沢駅から関電トンネル電気バスで黒部ダム駅に到着。
朝7時半からの始発便で黒部ダムに向かうのは、ほぼ登山者のみの様子。

黒部ダムからは勢いよく放水中で、登山者を迎えてくれている。
私も黒部ダムは何回も訪れているが、登山目的で来るのは実は初めて。

剱岳の登山口となる室堂へは
電気バス→ケーブルカー→ロープウェイ→トロリーバスと乗り継ぐ。
扇沢から室堂までの所要時間はおよそ1時間半。
大観峰へと向かうロープウェイからは針ノ木岳をはじめとする後立山連峰が見て取れる。

【AM9:00 室堂到着】
この日は日曜日。立山と書かれた石碑の前には既に大勢の登山者の姿。
室堂で既に標高2450m、天気は薄曇り。下界から比べるとだいぶ肌寒く感じる。
登山届はここ室堂駅で提出する。今回は1泊2日ソロテント泊の予定で登山届を記入。

室堂平は美しい自然と素晴らしい景色の宝庫。
登山ならずとも、この周辺だけで絶景スポットが点在する一大観光地。

「弥陀ヶ原」

「みくりが池」

「地獄谷」

【AM10:00 登山開始】
室堂平での景色を楽しんだ後、みくりが池から登山開始。
今回はテント泊なので、ザックはバルトロ75。
重量は計ってないが、いつもの通りなら水・食料込みで15㎏くらいかな?

しばらくは整備された遊歩道を行くと、眼下にテント場が見えてくる。
ここは “雷鳥沢キャンプ場”
広いキャンプ場で、すでに多くのテントが張られているが
今日の宿泊場所はここにあらず。

本日の幕営地に向かうには、黄色の矢印の “雷鳥坂” を上がり、
赤丸印の “別山乗越” まで登らないといけない。
「つまり山一つは越えないといけないのね・・・」

【AM10:30 雷鳥坂 登攀開始】
急な斜面にすぐに息が上がり、汗が噴き出す。
7月の表銀座縦走は槍ヶ岳山頂直前まで燕岳→大天井岳→西岳と3日間フルに歩いたけど
その時は小屋泊だったため、テント泊の荷物を背負って歩くのは昨年の蝶ヶ岳登山以来およそ1年振り。

雷鳥沢キャンプ場から剣御前小舎までは標高差500mとの事。
まだ登山開始から1時間も経たないうちから足がパンパンで疲労困憊・・・
今日の行程は幕営地である “剱沢キャンプ場” までの3時間半程度の歩行と舐めていたが
これはなかなか。。。
今回は久しぶりに一眼レフカメラと三脚持ってこようかと思ってたけど
「おいてきて良かった ♡ 」
最近の登山写真はもっぱらスマホ。
ここだけは自分の冷静な判断に感心した(笑)

【PM12:00 剱御前小舎 到着】
雷鳥沢キャンプ場がある “雷鳥平” から、ここ “別山乗越” までおよそ1時間半。
この剱御前小舎で昼食の予定だったけど、実は2時間半前に室堂駅でうどんを食べたばかり。
「ここで食べたら流石に食べすぎだろう。。。」
昼食メニューのラーメンが美味そうだったが、ここはトイレ休憩だけにしておく。

この別山乗越からは下りとなる。
山小屋の “剣山荘” までは左方向に向かい60分。
本日の幕営地 “剱沢キャンプ場” までは右の谷の斜面を下って40分程度の道のり。
じきにキャンプ場は見えてくるんだけど、
その前に ドン!

剱岳の雄姿!!

「剱岳、かっこええ~」
しかも、そのお膝元のテント場も素晴らしいロケーション!

【PM13:00 剱沢キャンプ場 到着】
本日の目的地、“剱沢キャンプ場” に到着。今日はここでテントを張ることになる。
他の登山客の皆さんも思い思いの場所にテントを設営中。
私も設営場所を物色中

剱岳が正面に見える、まっ平な場所を発見。しかも私が好きな隅っこ(笑)
さらに先人の登山者が築いたと思われる区画付の超優良分譲地!?

で、本日の我が家 完成。
テントの設営を終えても、まだ昼の1時半なのであたりを散策。

テントの受付はテント場内のすぐのところにある。
一人一泊、1000円也(テント1張り)

トイレも立派。バイオトイレでなかなか綺麗で清潔(あくまで山のテン場レベルで)

テン場から10分ほど下ったところにある “剱沢小屋” 売店はこちらで。
ビールにジュース、つまみにカップラーメンはここで買える。

【PM15:00】
テント内でコーヒーを飲みながらくつろぐ。
ティータイムの御茶菓子はフルーツ入りのシリアルバーだけどね・・・
目の前が剱なら、それだけで至福(笑)

いよいよ明日は剱岳山頂へのアタック。
明日の天気が気になるところだが、

台風が近づいているけど、高気圧が頑張ってくれてるね♡
明日の天気は上々の晴予報。

予定では明日の朝5時にテントを出発して、剱岳山頂に向かう計画。
「待ってろよ、剱!!」

というイメージで自撮り。。。
「明日の朝は早いから、もう寝よう」

“カニのタテバイ”
【2日目】
昨晩は夜8時に就寝。
強風でテントが揺らされてバタつく音で何度か目が覚めたが、概ね快眠。
今日は山頂アタックの日なので、朝4時に起床。

【AM5:00】
テントの中で簡単に朝食を済ませ、登山の準備を整える。
テントの外に出ると若干、空が明るくなってきていた。
昨晩の強風もおさまり、天気は良さそうな感じ。

【AM5:20 剱沢キャンプ場 出発】
他のテントも明かりが灯って準備中、もしくはもっと早くに出発している人も多い。
朝一にキャンプ場でトイレだけ済ませてから出発。

【AM5:30 剱沢小屋前】
剱沢小屋前の看板で記念撮影。
「いざ、岩と雪の殿堂 剱岳へ!」
アタックザックの中身は
水1.2ℓ、握り飯2個、行動食、ファーストエイドキット、雨具。
往復6時間程度の登山だが、余計な物を持って行かない分とても軽く感じる。

剱沢小屋から20分程度歩くと “剣山荘” が見えてきた。
山頂から一番近い山小屋なので出発の準備をしている人も多い。
私もここで中に着込んでいたライトダウンを脱ぎ、靴紐を絞めなおす。

【AM6:00】
剣山荘の脇を抜けて、登山道へ向かう。
この頃には完全に日も上がり、明るくなっていた。

剣山荘を出るとすぐに1番目の鎖場。
まずはお試し程度の鎖場だけど、剱岳の鎖場はそれぞれ番号とプレートがついているので、それだけでテンションが上がる(笑)

“一服剱” の手前に2番目の鎖場。
一服剱と言っても、こんなところで一服している訳にもいかない。

目の前には、剱岳の前衛峰 “前剱” がそびえ立っていた。
「これだけでヤバいね・・・」
剱岳山頂かと見紛う険しさ。。。

3番目鎖場 「前剱大岩」

4番目鎖場
ここまでの鎖場は注意するほどでは無いが、道はどんどん険しさを増していく。

前剱頂上までは急なガレ場。
後続者に石を落とさないよう、浮き石に気を付けて慎重に登る。
振り返ると出発したキャンプ場は遥か下のほうに見える。

【AM7:00】
ようやく前剱を登りきり稜線に出る。
稜線に出ると目の前に剱岳の姿がはっきりと見えた。

ただ、ここからが剱岳へ向かう核心部。
滑落や転落に、よりいっそう気を付けて進まないといけない。

本日1発目のビビりポイント
5番目鎖場 「前剱の門」 到着
※リンク先の動画は「とやまソフトセンター」さんのものです、とても参考になりました。
幅50㎝程度の一本橋を渡ってからの、絶壁トラバース。
とにかく見た目のインパクトが凄く、絶好の写真映えスポットになっていた(笑)

もちろん、写真を撮ったあとはカメラをしまい両手両足を使い慎重に渡る。
「今日は風がなくて良かったなぁ~」

この日は天気も良く、風も無い、絶好の登山日和。剱岳の姿も綺麗だ。
道は険しいが登山道や鎖場に特別の問題は無く、身体のコンディションも上々。

6番目鎖場 「前剱」
ここは一旦、下に降りる。

7番目鎖場 「平蔵の頭」
今度はのぼり返し。

8番目鎖場 「平蔵のコル」
「平蔵って、どこの平蔵さんだろうか?」

そして剱岳最大の核心部が見えてきた。

「何かもの凄い迫力・・・」

【AM8:00】
本日2発目のビビりポイント
9番目鎖場 「カニのタテバイ」 到着
※リンク先の動画は「とやまソフトセンター」さんのものです、映像で見ると凄い迫力ですね。
ほぼ垂直の岩壁・・・ (下から見上げると、そう見える)
これは気を引き締めて登らないといけない。
幸い大きな渋滞もしていないので、先行者と等間隔を保ちながら登っていく。

鎖と足場自体はしっかりとしている。
目の前の鎖と足場をしっかりと確認しながら一歩一歩、攀じ登っていく。
3点確保はしっかりと!
脚を踏み外せば、鎖を握る両手だけで自分の体重を支える腕力も無いし
まして、そんなに軽い体重では無い。。。

およそ30mの高さを5分ほどかけて登りきる。
上ってみると、それほど難しいところは無かった。
私の感覚で言うと槍ヶ岳山頂に登るのと、どっこいどっこいと言った感じ。
10年ぶりに剱岳に登りに来た登山者さん曰く
「鎖の場所や杭の位置が改善されて、すごく登りやすくなっているよ」 との事。
なるほど、登山者が安全に登れるよう整備してくれている方に感謝だ。

カニのタテバイを越えても、暫く鎖場と険しい道が地味に長く続く。
全身を使って攀じ登る分、疲労の色も濃くなってくる。
ようやく頂上へ向かう肩の部分に出ると景色が広がった。

山頂の御社が見える。
頂上まで、あと少し。

【AM8:40】
標高2999m 剱岳山頂に到着!
剱沢キャンプ場から約3時間20分での到着。

「看板がたくさんあるね(笑)」

剱岳 標高2999m
剱岳は北アルプス北部の立山連峰にある標高2999mの山。
日本百名山および新日本百名山に選定されている。
一般登山者が登る山の中では最も危険度の高い山とされ、
ルート上には岩稜伝いの鎖場や梯子が数多く点在している。
難所として「カニのタテバイ」や「カニのヨコバイ」と呼ばれる鎖場がある。
日本では数少ない氷河の現存する山で、氷河で削られた氷食尖峰になっており、
その峻険な山容は見るものを圧倒し、登山家からは「岩と雪の殿堂」とも呼ばれている。
(引用文)

剱沢キャンプ場から3時間20分。剣山荘から2時間40分。前剱頂上から1時間30分。
岩と鎖との格闘の末、ようやく山頂に到達。

山頂からは素晴らしい景色が広がっていた。

北の方角には、富山県の街並みから能登半島、そして日本海が広がっている。

南に目を移すと、はっきりと富士山の姿を確認することが出来る。
富士山の先はすぐ太平洋だと考えると、
「ここ剱岳の山頂から日本列島を縦断した眺めが今、目の前にあるんだ・・・」
と、ちょっと感動した。

そして東側には白馬岳や鹿島槍ヶ岳をはじめとする後立山連峰の山々。
後立山連峰の縦走路も一度は歩いてみたい道である。

まさに360度の大展望。
他の登山者たちも皆さん、山頂からの眺めを楽しんでいました。
「剱岳、登ったぞ~!!」

・・・というイメージで記念撮影。
皆さん、この場所から写真を撮っていましたね。
シャッター押してくれた方、ありがとうございました。

ここからは、昨日出発した室堂平から別山乗越、今日歩いた剱沢から前剱へと
今回の登山の道のりが全て見渡せる。
「今度はここから元来た道を戻るのか」
山頂では記念撮影をしたあと、持ってきた握り飯を食べて少し休憩。
景色を眺めながら30分ほど滞在していた。
「山頂も混みあってきたし、そろそろ戻ろうか・・・」
とりあえずテントの張ってある剱沢までは戻らないといけない。

【AM9:10 下山開始】
再び元来た険しい道を下山する。
下りは登り以上に気を付けないといけない。

途中、早月尾根ルートへの分岐点。
右方向へ下山すると、富山県の上市町方面に下りることが出来るらしい。
「標高差2200m超 北アルプス3大急登のひとつ 北アルプス屈指の長大尾根コース」
と聞いただけで恐ろしい(笑)

【AM9:30】
本日3発目のビビりポイント
10番目鎖場 「カニのヨコバイ」 到着
※リンク先の動画は「とやまソフトセンター」さんのものです、とにかく最初の一歩目が重要です。

剱岳登山の難所としては「カニのタテバイ」と双璧を成す、下りの難関。

鎖をたよりに、断崖絶壁をカニのように横歩きで進まないといけない。

鎖を掴みながら慎重に渡り、ここも無事クリア。
個人的感想だけど、ここは言われているより思ったほど何ともなくて逆に肩透かし。
一緒に渡った登山者さんとも「大した事なかったね~」との感想。
下から見ると、足の置場の岩棚はしっかりと確認できる。
(上から見ていると足場が確認しずらく、一歩目の足の置場が難しいみたい)

無事、カニのヨコバイを通過しても気を抜けないのが剱岳。
お次は傾斜が急な鉄梯子。
でも剱岳では、このようなしっかりとした梯子の方が安心感がでるのが不思議。
「もはや麻痺してる?」(笑)

11番目鎖場 「平蔵のコル」
剱岳の下山ルートはむしろ、ここからが厳しい。

12番目鎖場 「平蔵の頭」
「だから、平蔵さんって誰なの!?」
って言いたいぐらい険しい登りが続く。

13番目鎖場 「前剱の門」
ここでようやく、番号のついている最後の鎖場。
剱岳・別山尾根ルートの主な鎖場の数は13個

上の図を見ると、場所と順番が良くわかった。

地図に書いてある通り、鎖場のあとのトラバース道も道幅が狭いため注意が必要。
油断して足を踏み外したら、谷底まで真っ逆さまだね・・・

【AM10:30 前剱頂上 到着】
厳しい鎖場を抜けて、前剱まで無事に戻ってきた。
既に朝の登山開始から5時間以上が経過。
疲労と緊張感の連続で心身ともに疲れ切ってくる頃
「本当に危ないのは、ここから剣山荘までの下りだ!」
同じペースで一緒に下りてきた登山者の方が教えてくれた。
事実、前剱からの下りは浮石が多く。少し足を滑らしたら滑落の危険が伴う。
また、ちょっとした不注意で落石を落として先行者に怪我でも負わせてしまったら、
それこそ楽しい登山どころではなくなってしまう。

振り返ると剱岳の姿。
前剱から眺める最後の剱岳にお別れを告げ
「ここが正念場!」 と、慎重にくだる。

【AM11:40 剣山荘 到着】
山頂から2時間30分で剣山荘に到着。
ここでようやく気を抜いて、一息つく事が出来た。
ボトルに残っていた水を飲み干した後、追加でコーラを購入し一人で乾杯。
有料でトイレを貸していただき、ついでにお土産も購入。
やっぱり山小屋ってありがたいですね。。。

あとは剱沢小屋を通過して、キャンプ地に戻るだけ
剱岳もだいぶ遠くに見えるようになっていた。

【PM12:20 剱沢キャンプ場 到着】
朝の出発からちょうど往復7時間で無事、剱沢キャンプ場に戻ってきた。

自分のテントに戻り、そのまま倒れ込む。
「もうあまり動きたくない・・・」
今回の登山の予定は1泊2日。
この後、別山乗越を越えて室堂駅まで帰らないといけない。
室堂駅発のトロリーバスの最終便は、夕方4時30分。
このままで間に合うのか!?

剱沢キャンプ場
【2日目 後半】
剱沢キャンプ場のテントに戻ってきたのは、午後12時半。
室堂の最終便のトロリーバスは午後4時半発なので、残された時間は4時間ある。
これからテントを撤収し、剱沢から室堂までの道のりは3時間を見ていた。
全て当初の計画どおりである。
ただ一つ予定外だったのが・・・
「身体が疲れて動かない。。。」 (笑)
緊張感と高揚感で全く気付かなかったが、剱岳への往復7時間は
確実に身体に疲労を蓄積させていた。

とりあえず腹が減っているので、簡単に昼飯を済ます。
少し休んだのち、テントの撤収に取り掛かるが、
なんせテントの中の整理が出来ていないので撤収に手間取る・・・

【PM13:40 剱沢キャンプ場 出発】
予定より10分遅れで剱沢キャンプ場を後にする。
これから別山乗越まで登って、剱御前小舎まで50分。さらに室堂まで2時間。
剱御前小舎到着14時半。室堂到着16時半がリミット。
「わかっているけど、荷物が重い・・・」
(アタックザックからテント泊装備を詰め込んだザックに背負いかえると
こんなに重いのか、忘れていた。。。)
全然、前に進まない。
剱御前小舎、14時半到着を目標に歩を進めるが

【PM14:30】
途中の “石井逸太郎” のレリーフの前でタイムアップ。。。
ここで、今日の帰宅を完全に諦める。
実は念のため、今回の登山では予備日を1日みてあった。
予備日は、天候が悪く剱岳へのアタックが出来ない場合の為のものだったが
ここで使わない手はない。
「ゆっくり、お行きなさい。」
石井先生もそう言っているように思えた(笑)

【PM14:45 別山乗越 到着】
当初の予定より15分遅れで別山乗越に到着。

最終バスを諦めて時間に余裕が出来たので、
剱御前小舎でカップそばとコーラを注文してゆっくりと休憩。

別山乗越からは素晴らしい雲海が広がっていた。
「時間と心に余裕があるのはいいことだな~♡」

30分ほどの休憩ののち雷鳥坂を下り始めると、雷鳥沢キャンプ場が見えてきた。
当初の予定を変更して、今日の宿泊地はあそこになる。

綺麗な清流の “称名川” を渡ると。

【PM16:30 雷鳥沢キャンプ場 到着】
雷鳥沢キャンプ場の到着時刻は結局、最終バスの出発時刻を過ぎていた。
「急いでいたら間に合ってたかな?」とも思ったが、既に疲労困憊。
実際に雷鳥坂の下りで1回、脚を滑らせて派手に尻もちをついたりしていた。
「やっと着いた。。。」
今日の行動時間は休憩時間も入れて11時間を超えていた。

設営完了。今日もテント泊。
雷鳥沢キャンプ場はとても広く、どの場所もフラットでテントを設営しやすい。
1人1泊、テント1張りで1000円也。
キャンプ場内には管理棟があり、売店は無いが綺麗な水洗トイレと洗面所が併設されている。
しかもここのキャンプ場、山のテン場なのにWi-Fi飛んでる!(無料Wi-Fi使えます)

そして、目の前は立山
雄山(3003m)、大汝山(3015m)、富士ノ折立(2999m)の眺め。
「折角ここで一泊するなら、明日は雄山にでも・・・」
と一瞬思ったが、もう今回は剱岳でお腹いっぱいである。
他の山の登頂は、次の機会に取っておかないと勿体ない(笑)

「もう今日は立山を眺めながら、テントで寛ごう」
予備の食料も飲み物もスマホの充電も
まだ充分残っていたのでテント内でゆっくり過ごすことにする。

夜8時には就寝。この日は風も無く、静かな夜だった。
近くを流れる称名川のせせらぎを聞きながら眠りについた。
【3日目】

最終日は朝5時前に起床。
天気は曇りで御来光は拝めなかったが、ゆっくりと起床。
この日の行程は室堂に戻るだけなので、朝からのんびりモード。。。
それにしても、雷鳥沢キャンプ場も素晴らしいロケーションですね。
「また、来たいな~」

【AM7:50】
雷鳥沢キャンプ場をあとにする。
ここからは暫く遊歩道の階段を上るのだが、休養ばっちりで身体は軽い。

途中の“血の池地獄”は、天国か?と思うぐらい綺麗な景色だった。

大日連山と地獄谷。
立山は霊山として古来から山岳信仰の対象であり
現代まで伝わる “立山曼荼羅” の絵のとおり、地獄に関連する名前が多かった。

【AM8:20 みくりが池 到着】
2日前に登山をスタートさせた、みくりが池に到着。

天気はイマイチだが風は無風で、みくりが池が写し出す立山の姿が見事だった。
「これは登山の最後に御褒美だね」

【AM8:30 室堂ターミナル 到着】
朝一の室堂はまだ観光客も居なく、静か。
“立山” は一つの山の名前では無く、北アルプス北部に位置する
立山連峰と後立山連峰からなる複列連峰。
古来より信仰の対象として神々の宿る精神的な山々の空間を ‟立山” と称した。(引用文)
「つまり、ここらへん一体が立山なのね」

黒部ダム建設に関わる犠牲者を祀った殉職者慰霊碑
帰路はトロリーバスやロープウェイを乗り継いで、扇沢まで戻る。
室堂からのトロリーバスは雄山の真下にトンネルを掘削し、そこを通過している。
ここまでの道のりで、日本の土木と建築技術の高さにまず驚かされる。
「先人達の尊い犠牲の上で、私たちは登山を楽しむ事が出来るんだな~」

登山の最後の楽しみ、帰る途中で安曇野に立ち寄りお蕎麦を頂く。
無事に剱岳登頂を成し遂げた達成感とともに、お腹いっぱい食べてしまった。
毎回、登山の度にダイエットしようと思うのだけど、なかなか・・・
もう体重を落とすのは諦めて、今後は現状維持に目標を変えよう(笑)

前剱にて剱岳山頂を望む
今年の北アルプス登山は、この剱岳登山で最後だろう。
今年は7月の表銀座縦走と今回の剱岳、2回の登山を楽しむことが出来た。
このコロナ禍の中で登山を楽しめるのは幸せな事だ。
また一方で、この登山の翌週に北アルプス周辺を震源とする大きな地震が起きている。
地震の瞬間に、山が揺れて土煙とともに大きな落石が落ちる映像は衝撃的だった。
今後も安全に登山が楽しめる事を祈りながら、次回の山行を考えようと思う。
「次はどの山のぼろうか?」
【編集後記】
念願だった剱岳登山。とくに昨年はコロナ禍の影響で予定を1年延期した今回の登山だったが、天気にも恵まれて最高の登山になった。
「最も危険度の高い山」、「日本百名山、最難関」、「滑落事故、多数」などと色々な形容で語られる剱岳だが実際に登ってみると、鎖場の整備や登山道のマーキングなどがしっかりとなされていて思ったよりも安全に登ることが出来た。
只それは今回の天気が良かったのと、山頂ピストンで荷物が軽かった事が大きい。天候などの状況により登山の難易度は大きく変わるだろう。
登山道は険しいところが多く、鎖場は常に緊張感を強いられるし、ガレ場では浮石に注意して歩かないといけない。落石も多く、実際に下山途中で一回だけテニスボール大の石が上から転がり落ちてきた。あくまで自己責任だがヘルメットの着用は必須だろう。

それでも、山頂に立った時の達成感と景色の素晴らしさは最高のものだった。
この歳になって登山を再開してから槍ヶ岳・奥穂高岳そして今回の剱岳と、北アルプスの主役級と言うべき山々に登れたことは自分の人生においても幸せな出来事になった。
この登山の翌週にはニュースで流れた通り、北アルプス周辺で大きな地震があった。一部で怪我人や遭難者が発生しているようだが、山では地震や天候を含めて何が起きるか分からない。この事を肝に銘じて、今後も安全で楽しい登山をしていきたいと思う。
かねてからの念願だった剱岳に登ってきました。
長く続くコロナウイルスの影響で、数々のスポーツイベントが中止になり、
チケットが当選して楽しみにしていた東京オリンピックの無観客開催など
今年も我慢を強いられる日々・・・
それでも登山に関しては、
7月に身内の登山仲間3人で表銀座縦走からの槍ヶ岳登山(残雪の為、途中撤退)
8月には東京オリンピックの自転車ロードレース観戦の為に静岡県の三国山トレッキングとそれなりに活動してました。
そして9月、コロナワクチンの2回目接種が済んだタイミングで富山県・剱岳へと向う事に。
【1日目】

【AM7:00 扇沢バスターミナル】
お盆から続く長雨、9月に入ってからの秋雨の合間を縫って、
この週末なら!という事で長野県に車で急行。扇沢側から黒部アルペンルートに入る。
(立山黒部アルペンルートは今年で全線開業50周年みたいですね)

扇沢駅から関電トンネル電気バスで黒部ダム駅に到着。
朝7時半からの始発便で黒部ダムに向かうのは、ほぼ登山者のみの様子。

黒部ダムからは勢いよく放水中で、登山者を迎えてくれている。
私も黒部ダムは何回も訪れているが、登山目的で来るのは実は初めて。

剱岳の登山口となる室堂へは
電気バス→ケーブルカー→ロープウェイ→トロリーバスと乗り継ぐ。
扇沢から室堂までの所要時間はおよそ1時間半。
大観峰へと向かうロープウェイからは針ノ木岳をはじめとする後立山連峰が見て取れる。

【AM9:00 室堂到着】
この日は日曜日。立山と書かれた石碑の前には既に大勢の登山者の姿。
室堂で既に標高2450m、天気は薄曇り。下界から比べるとだいぶ肌寒く感じる。
登山届はここ室堂駅で提出する。今回は1泊2日ソロテント泊の予定で登山届を記入。

室堂平は美しい自然と素晴らしい景色の宝庫。
登山ならずとも、この周辺だけで絶景スポットが点在する一大観光地。

「弥陀ヶ原」

「みくりが池」

「地獄谷」

【AM10:00 登山開始】
室堂平での景色を楽しんだ後、みくりが池から登山開始。
今回はテント泊なので、ザックはバルトロ75。
重量は計ってないが、いつもの通りなら水・食料込みで15㎏くらいかな?

しばらくは整備された遊歩道を行くと、眼下にテント場が見えてくる。
ここは “雷鳥沢キャンプ場”
広いキャンプ場で、すでに多くのテントが張られているが
今日の宿泊場所はここにあらず。

本日の幕営地に向かうには、黄色の矢印の “雷鳥坂” を上がり、
赤丸印の “別山乗越” まで登らないといけない。
「つまり山一つは越えないといけないのね・・・」

【AM10:30 雷鳥坂 登攀開始】
急な斜面にすぐに息が上がり、汗が噴き出す。
7月の表銀座縦走は槍ヶ岳山頂直前まで燕岳→大天井岳→西岳と3日間フルに歩いたけど
その時は小屋泊だったため、テント泊の荷物を背負って歩くのは昨年の蝶ヶ岳登山以来およそ1年振り。

雷鳥沢キャンプ場から剣御前小舎までは標高差500mとの事。
まだ登山開始から1時間も経たないうちから足がパンパンで疲労困憊・・・
今日の行程は幕営地である “剱沢キャンプ場” までの3時間半程度の歩行と舐めていたが
これはなかなか。。。
今回は久しぶりに一眼レフカメラと三脚持ってこようかと思ってたけど
「おいてきて良かった ♡ 」
最近の登山写真はもっぱらスマホ。
ここだけは自分の冷静な判断に感心した(笑)

【PM12:00 剱御前小舎 到着】
雷鳥沢キャンプ場がある “雷鳥平” から、ここ “別山乗越” までおよそ1時間半。
この剱御前小舎で昼食の予定だったけど、実は2時間半前に室堂駅でうどんを食べたばかり。
「ここで食べたら流石に食べすぎだろう。。。」
昼食メニューのラーメンが美味そうだったが、ここはトイレ休憩だけにしておく。

この別山乗越からは下りとなる。
山小屋の “剣山荘” までは左方向に向かい60分。
本日の幕営地 “剱沢キャンプ場” までは右の谷の斜面を下って40分程度の道のり。
じきにキャンプ場は見えてくるんだけど、
その前に ドン!

剱岳の雄姿!!

「剱岳、かっこええ~」
しかも、そのお膝元のテント場も素晴らしいロケーション!

【PM13:00 剱沢キャンプ場 到着】
本日の目的地、“剱沢キャンプ場” に到着。今日はここでテントを張ることになる。
他の登山客の皆さんも思い思いの場所にテントを設営中。
私も設営場所を物色中

剱岳が正面に見える、まっ平な場所を発見。しかも私が好きな隅っこ(笑)
さらに先人の登山者が築いたと思われる区画付の超優良分譲地!?

で、本日の我が家 完成。
テントの設営を終えても、まだ昼の1時半なのであたりを散策。

テントの受付はテント場内のすぐのところにある。
一人一泊、1000円也(テント1張り)

トイレも立派。バイオトイレでなかなか綺麗で清潔(あくまで山のテン場レベルで)

テン場から10分ほど下ったところにある “剱沢小屋” 売店はこちらで。
ビールにジュース、つまみにカップラーメンはここで買える。

【PM15:00】
テント内でコーヒーを飲みながらくつろぐ。
ティータイムの御茶菓子はフルーツ入りのシリアルバーだけどね・・・
目の前が剱なら、それだけで至福(笑)

いよいよ明日は剱岳山頂へのアタック。
明日の天気が気になるところだが、

台風が近づいているけど、高気圧が頑張ってくれてるね♡
明日の天気は上々の晴予報。

予定では明日の朝5時にテントを出発して、剱岳山頂に向かう計画。
「待ってろよ、剱!!」

というイメージで自撮り。。。
「明日の朝は早いから、もう寝よう」

“カニのタテバイ”
【2日目】
昨晩は夜8時に就寝。
強風でテントが揺らされてバタつく音で何度か目が覚めたが、概ね快眠。
今日は山頂アタックの日なので、朝4時に起床。

【AM5:00】
テントの中で簡単に朝食を済ませ、登山の準備を整える。
テントの外に出ると若干、空が明るくなってきていた。
昨晩の強風もおさまり、天気は良さそうな感じ。

【AM5:20 剱沢キャンプ場 出発】
他のテントも明かりが灯って準備中、もしくはもっと早くに出発している人も多い。
朝一にキャンプ場でトイレだけ済ませてから出発。

【AM5:30 剱沢小屋前】
剱沢小屋前の看板で記念撮影。
「いざ、岩と雪の殿堂 剱岳へ!」
アタックザックの中身は
水1.2ℓ、握り飯2個、行動食、ファーストエイドキット、雨具。
往復6時間程度の登山だが、余計な物を持って行かない分とても軽く感じる。

剱沢小屋から20分程度歩くと “剣山荘” が見えてきた。
山頂から一番近い山小屋なので出発の準備をしている人も多い。
私もここで中に着込んでいたライトダウンを脱ぎ、靴紐を絞めなおす。

【AM6:00】
剣山荘の脇を抜けて、登山道へ向かう。
この頃には完全に日も上がり、明るくなっていた。

剣山荘を出るとすぐに1番目の鎖場。
まずはお試し程度の鎖場だけど、剱岳の鎖場はそれぞれ番号とプレートがついているので、それだけでテンションが上がる(笑)

“一服剱” の手前に2番目の鎖場。
一服剱と言っても、こんなところで一服している訳にもいかない。

目の前には、剱岳の前衛峰 “前剱” がそびえ立っていた。
「これだけでヤバいね・・・」
剱岳山頂かと見紛う険しさ。。。

3番目鎖場 「前剱大岩」

4番目鎖場
ここまでの鎖場は注意するほどでは無いが、道はどんどん険しさを増していく。

前剱頂上までは急なガレ場。
後続者に石を落とさないよう、浮き石に気を付けて慎重に登る。
振り返ると出発したキャンプ場は遥か下のほうに見える。

【AM7:00】
ようやく前剱を登りきり稜線に出る。
稜線に出ると目の前に剱岳の姿がはっきりと見えた。

ただ、ここからが剱岳へ向かう核心部。
滑落や転落に、よりいっそう気を付けて進まないといけない。

本日1発目のビビりポイント
5番目鎖場 「前剱の門」 到着
※リンク先の動画は「とやまソフトセンター」さんのものです、とても参考になりました。
幅50㎝程度の一本橋を渡ってからの、絶壁トラバース。
とにかく見た目のインパクトが凄く、絶好の写真映えスポットになっていた(笑)

もちろん、写真を撮ったあとはカメラをしまい両手両足を使い慎重に渡る。
「今日は風がなくて良かったなぁ~」

この日は天気も良く、風も無い、絶好の登山日和。剱岳の姿も綺麗だ。
道は険しいが登山道や鎖場に特別の問題は無く、身体のコンディションも上々。

6番目鎖場 「前剱」
ここは一旦、下に降りる。

7番目鎖場 「平蔵の頭」
今度はのぼり返し。

8番目鎖場 「平蔵のコル」
「平蔵って、どこの平蔵さんだろうか?」

そして剱岳最大の核心部が見えてきた。

「何かもの凄い迫力・・・」

【AM8:00】
本日2発目のビビりポイント
9番目鎖場 「カニのタテバイ」 到着
※リンク先の動画は「とやまソフトセンター」さんのものです、映像で見ると凄い迫力ですね。
ほぼ垂直の岩壁・・・ (下から見上げると、そう見える)
これは気を引き締めて登らないといけない。
幸い大きな渋滞もしていないので、先行者と等間隔を保ちながら登っていく。

鎖と足場自体はしっかりとしている。
目の前の鎖と足場をしっかりと確認しながら一歩一歩、攀じ登っていく。
3点確保はしっかりと!
脚を踏み外せば、鎖を握る両手だけで自分の体重を支える腕力も無いし
まして、そんなに軽い体重では無い。。。

およそ30mの高さを5分ほどかけて登りきる。
上ってみると、それほど難しいところは無かった。
私の感覚で言うと槍ヶ岳山頂に登るのと、どっこいどっこいと言った感じ。
10年ぶりに剱岳に登りに来た登山者さん曰く
「鎖の場所や杭の位置が改善されて、すごく登りやすくなっているよ」 との事。
なるほど、登山者が安全に登れるよう整備してくれている方に感謝だ。

カニのタテバイを越えても、暫く鎖場と険しい道が地味に長く続く。
全身を使って攀じ登る分、疲労の色も濃くなってくる。
ようやく頂上へ向かう肩の部分に出ると景色が広がった。

山頂の御社が見える。
頂上まで、あと少し。

【AM8:40】
標高2999m 剱岳山頂に到着!
剱沢キャンプ場から約3時間20分での到着。

「看板がたくさんあるね(笑)」

剱岳 標高2999m
剱岳は北アルプス北部の立山連峰にある標高2999mの山。
日本百名山および新日本百名山に選定されている。
一般登山者が登る山の中では最も危険度の高い山とされ、
ルート上には岩稜伝いの鎖場や梯子が数多く点在している。
難所として「カニのタテバイ」や「カニのヨコバイ」と呼ばれる鎖場がある。
日本では数少ない氷河の現存する山で、氷河で削られた氷食尖峰になっており、
その峻険な山容は見るものを圧倒し、登山家からは「岩と雪の殿堂」とも呼ばれている。
(引用文)

剱沢キャンプ場から3時間20分。剣山荘から2時間40分。前剱頂上から1時間30分。
岩と鎖との格闘の末、ようやく山頂に到達。

山頂からは素晴らしい景色が広がっていた。

北の方角には、富山県の街並みから能登半島、そして日本海が広がっている。

南に目を移すと、はっきりと富士山の姿を確認することが出来る。
富士山の先はすぐ太平洋だと考えると、
「ここ剱岳の山頂から日本列島を縦断した眺めが今、目の前にあるんだ・・・」
と、ちょっと感動した。

そして東側には白馬岳や鹿島槍ヶ岳をはじめとする後立山連峰の山々。
後立山連峰の縦走路も一度は歩いてみたい道である。

まさに360度の大展望。
他の登山者たちも皆さん、山頂からの眺めを楽しんでいました。
「剱岳、登ったぞ~!!」

・・・というイメージで記念撮影。
皆さん、この場所から写真を撮っていましたね。
シャッター押してくれた方、ありがとうございました。

ここからは、昨日出発した室堂平から別山乗越、今日歩いた剱沢から前剱へと
今回の登山の道のりが全て見渡せる。
「今度はここから元来た道を戻るのか」
山頂では記念撮影をしたあと、持ってきた握り飯を食べて少し休憩。
景色を眺めながら30分ほど滞在していた。
「山頂も混みあってきたし、そろそろ戻ろうか・・・」
とりあえずテントの張ってある剱沢までは戻らないといけない。

【AM9:10 下山開始】
再び元来た険しい道を下山する。
下りは登り以上に気を付けないといけない。

途中、早月尾根ルートへの分岐点。
右方向へ下山すると、富山県の上市町方面に下りることが出来るらしい。
「標高差2200m超 北アルプス3大急登のひとつ 北アルプス屈指の長大尾根コース」
と聞いただけで恐ろしい(笑)

【AM9:30】
本日3発目のビビりポイント
10番目鎖場 「カニのヨコバイ」 到着
※リンク先の動画は「とやまソフトセンター」さんのものです、とにかく最初の一歩目が重要です。

剱岳登山の難所としては「カニのタテバイ」と双璧を成す、下りの難関。

鎖をたよりに、断崖絶壁をカニのように横歩きで進まないといけない。

鎖を掴みながら慎重に渡り、ここも無事クリア。
個人的感想だけど、ここは言われているより思ったほど何ともなくて逆に肩透かし。
一緒に渡った登山者さんとも「大した事なかったね~」との感想。
下から見ると、足の置場の岩棚はしっかりと確認できる。
(上から見ていると足場が確認しずらく、一歩目の足の置場が難しいみたい)

無事、カニのヨコバイを通過しても気を抜けないのが剱岳。
お次は傾斜が急な鉄梯子。
でも剱岳では、このようなしっかりとした梯子の方が安心感がでるのが不思議。
「もはや麻痺してる?」(笑)

11番目鎖場 「平蔵のコル」
剱岳の下山ルートはむしろ、ここからが厳しい。

12番目鎖場 「平蔵の頭」
「だから、平蔵さんって誰なの!?」
って言いたいぐらい険しい登りが続く。

13番目鎖場 「前剱の門」
ここでようやく、番号のついている最後の鎖場。
剱岳・別山尾根ルートの主な鎖場の数は13個

上の図を見ると、場所と順番が良くわかった。

地図に書いてある通り、鎖場のあとのトラバース道も道幅が狭いため注意が必要。
油断して足を踏み外したら、谷底まで真っ逆さまだね・・・

【AM10:30 前剱頂上 到着】
厳しい鎖場を抜けて、前剱まで無事に戻ってきた。
既に朝の登山開始から5時間以上が経過。
疲労と緊張感の連続で心身ともに疲れ切ってくる頃
「本当に危ないのは、ここから剣山荘までの下りだ!」
同じペースで一緒に下りてきた登山者の方が教えてくれた。
事実、前剱からの下りは浮石が多く。少し足を滑らしたら滑落の危険が伴う。
また、ちょっとした不注意で落石を落として先行者に怪我でも負わせてしまったら、
それこそ楽しい登山どころではなくなってしまう。

振り返ると剱岳の姿。
前剱から眺める最後の剱岳にお別れを告げ
「ここが正念場!」 と、慎重にくだる。

【AM11:40 剣山荘 到着】
山頂から2時間30分で剣山荘に到着。
ここでようやく気を抜いて、一息つく事が出来た。
ボトルに残っていた水を飲み干した後、追加でコーラを購入し一人で乾杯。
有料でトイレを貸していただき、ついでにお土産も購入。
やっぱり山小屋ってありがたいですね。。。

あとは剱沢小屋を通過して、キャンプ地に戻るだけ
剱岳もだいぶ遠くに見えるようになっていた。

【PM12:20 剱沢キャンプ場 到着】
朝の出発からちょうど往復7時間で無事、剱沢キャンプ場に戻ってきた。

自分のテントに戻り、そのまま倒れ込む。
「もうあまり動きたくない・・・」
今回の登山の予定は1泊2日。
この後、別山乗越を越えて室堂駅まで帰らないといけない。
室堂駅発のトロリーバスの最終便は、夕方4時30分。
このままで間に合うのか!?

剱沢キャンプ場
【2日目 後半】
剱沢キャンプ場のテントに戻ってきたのは、午後12時半。
室堂の最終便のトロリーバスは午後4時半発なので、残された時間は4時間ある。
これからテントを撤収し、剱沢から室堂までの道のりは3時間を見ていた。
全て当初の計画どおりである。
ただ一つ予定外だったのが・・・
「身体が疲れて動かない。。。」 (笑)
緊張感と高揚感で全く気付かなかったが、剱岳への往復7時間は
確実に身体に疲労を蓄積させていた。

とりあえず腹が減っているので、簡単に昼飯を済ます。
少し休んだのち、テントの撤収に取り掛かるが、
なんせテントの中の整理が出来ていないので撤収に手間取る・・・

【PM13:40 剱沢キャンプ場 出発】
予定より10分遅れで剱沢キャンプ場を後にする。
これから別山乗越まで登って、剱御前小舎まで50分。さらに室堂まで2時間。
剱御前小舎到着14時半。室堂到着16時半がリミット。
「わかっているけど、荷物が重い・・・」
(アタックザックからテント泊装備を詰め込んだザックに背負いかえると
こんなに重いのか、忘れていた。。。)
全然、前に進まない。
剱御前小舎、14時半到着を目標に歩を進めるが

【PM14:30】
途中の “石井逸太郎” のレリーフの前でタイムアップ。。。
ここで、今日の帰宅を完全に諦める。
実は念のため、今回の登山では予備日を1日みてあった。
予備日は、天候が悪く剱岳へのアタックが出来ない場合の為のものだったが
ここで使わない手はない。
「ゆっくり、お行きなさい。」
石井先生もそう言っているように思えた(笑)

【PM14:45 別山乗越 到着】
当初の予定より15分遅れで別山乗越に到着。

最終バスを諦めて時間に余裕が出来たので、
剱御前小舎でカップそばとコーラを注文してゆっくりと休憩。

別山乗越からは素晴らしい雲海が広がっていた。
「時間と心に余裕があるのはいいことだな~♡」

30分ほどの休憩ののち雷鳥坂を下り始めると、雷鳥沢キャンプ場が見えてきた。
当初の予定を変更して、今日の宿泊地はあそこになる。

綺麗な清流の “称名川” を渡ると。

【PM16:30 雷鳥沢キャンプ場 到着】
雷鳥沢キャンプ場の到着時刻は結局、最終バスの出発時刻を過ぎていた。
「急いでいたら間に合ってたかな?」とも思ったが、既に疲労困憊。
実際に雷鳥坂の下りで1回、脚を滑らせて派手に尻もちをついたりしていた。
「やっと着いた。。。」
今日の行動時間は休憩時間も入れて11時間を超えていた。

設営完了。今日もテント泊。
雷鳥沢キャンプ場はとても広く、どの場所もフラットでテントを設営しやすい。
1人1泊、テント1張りで1000円也。
キャンプ場内には管理棟があり、売店は無いが綺麗な水洗トイレと洗面所が併設されている。
しかもここのキャンプ場、山のテン場なのにWi-Fi飛んでる!(無料Wi-Fi使えます)

そして、目の前は立山
雄山(3003m)、大汝山(3015m)、富士ノ折立(2999m)の眺め。
「折角ここで一泊するなら、明日は雄山にでも・・・」
と一瞬思ったが、もう今回は剱岳でお腹いっぱいである。
他の山の登頂は、次の機会に取っておかないと勿体ない(笑)

「もう今日は立山を眺めながら、テントで寛ごう」
予備の食料も飲み物もスマホの充電も
まだ充分残っていたのでテント内でゆっくり過ごすことにする。

夜8時には就寝。この日は風も無く、静かな夜だった。
近くを流れる称名川のせせらぎを聞きながら眠りについた。
【3日目】

最終日は朝5時前に起床。
天気は曇りで御来光は拝めなかったが、ゆっくりと起床。
この日の行程は室堂に戻るだけなので、朝からのんびりモード。。。
それにしても、雷鳥沢キャンプ場も素晴らしいロケーションですね。
「また、来たいな~」

【AM7:50】
雷鳥沢キャンプ場をあとにする。
ここからは暫く遊歩道の階段を上るのだが、休養ばっちりで身体は軽い。

途中の“血の池地獄”は、天国か?と思うぐらい綺麗な景色だった。

大日連山と地獄谷。
立山は霊山として古来から山岳信仰の対象であり
現代まで伝わる “立山曼荼羅” の絵のとおり、地獄に関連する名前が多かった。

【AM8:20 みくりが池 到着】
2日前に登山をスタートさせた、みくりが池に到着。

天気はイマイチだが風は無風で、みくりが池が写し出す立山の姿が見事だった。
「これは登山の最後に御褒美だね」

【AM8:30 室堂ターミナル 到着】
朝一の室堂はまだ観光客も居なく、静か。
“立山” は一つの山の名前では無く、北アルプス北部に位置する
立山連峰と後立山連峰からなる複列連峰。
古来より信仰の対象として神々の宿る精神的な山々の空間を ‟立山” と称した。(引用文)
「つまり、ここらへん一体が立山なのね」

黒部ダム建設に関わる犠牲者を祀った殉職者慰霊碑
帰路はトロリーバスやロープウェイを乗り継いで、扇沢まで戻る。
室堂からのトロリーバスは雄山の真下にトンネルを掘削し、そこを通過している。
ここまでの道のりで、日本の土木と建築技術の高さにまず驚かされる。
「先人達の尊い犠牲の上で、私たちは登山を楽しむ事が出来るんだな~」

登山の最後の楽しみ、帰る途中で安曇野に立ち寄りお蕎麦を頂く。
無事に剱岳登頂を成し遂げた達成感とともに、お腹いっぱい食べてしまった。
毎回、登山の度にダイエットしようと思うのだけど、なかなか・・・
もう体重を落とすのは諦めて、今後は現状維持に目標を変えよう(笑)

前剱にて剱岳山頂を望む
今年の北アルプス登山は、この剱岳登山で最後だろう。
今年は7月の表銀座縦走と今回の剱岳、2回の登山を楽しむことが出来た。
このコロナ禍の中で登山を楽しめるのは幸せな事だ。
また一方で、この登山の翌週に北アルプス周辺を震源とする大きな地震が起きている。
地震の瞬間に、山が揺れて土煙とともに大きな落石が落ちる映像は衝撃的だった。
今後も安全に登山が楽しめる事を祈りながら、次回の山行を考えようと思う。
「次はどの山のぼろうか?」
【編集後記】
念願だった剱岳登山。とくに昨年はコロナ禍の影響で予定を1年延期した今回の登山だったが、天気にも恵まれて最高の登山になった。
「最も危険度の高い山」、「日本百名山、最難関」、「滑落事故、多数」などと色々な形容で語られる剱岳だが実際に登ってみると、鎖場の整備や登山道のマーキングなどがしっかりとなされていて思ったよりも安全に登ることが出来た。
只それは今回の天気が良かったのと、山頂ピストンで荷物が軽かった事が大きい。天候などの状況により登山の難易度は大きく変わるだろう。
登山道は険しいところが多く、鎖場は常に緊張感を強いられるし、ガレ場では浮石に注意して歩かないといけない。落石も多く、実際に下山途中で一回だけテニスボール大の石が上から転がり落ちてきた。あくまで自己責任だがヘルメットの着用は必須だろう。

それでも、山頂に立った時の達成感と景色の素晴らしさは最高のものだった。
この歳になって登山を再開してから槍ヶ岳・奥穂高岳そして今回の剱岳と、北アルプスの主役級と言うべき山々に登れたことは自分の人生においても幸せな出来事になった。
この登山の翌週にはニュースで流れた通り、北アルプス周辺で大きな地震があった。一部で怪我人や遭難者が発生しているようだが、山では地震や天候を含めて何が起きるか分からない。この事を肝に銘じて、今後も安全で楽しい登山をしていきたいと思う。
この記事へのコメント
こんにちは。
年に一度の山行記今年も楽しく読ませていただきました。剣岳、凄いの一言ですね。
岩、のオンパレード。写真からも難易度の高さがよく伝わってきました。さすがA++の山ですね。ヨコバイ、タテバイもスゴイですけど、はしごの方が怖そうに感じました。
今回の記事でいつかは行ってみたい山から、是非行ってみたい山に変わりました。
年に一度の山行記今年も楽しく読ませていただきました。剣岳、凄いの一言ですね。
岩、のオンパレード。写真からも難易度の高さがよく伝わってきました。さすがA++の山ですね。ヨコバイ、タテバイもスゴイですけど、はしごの方が怖そうに感じました。
今回の記事でいつかは行ってみたい山から、是非行ってみたい山に変わりました。
てんぱぱさん、こんにちは。
年に一度の山行記録をご覧戴きまして、ありがとうございます。
本当は登りに行きたい山は沢山あるのですが、年に1.2回が精一杯ですね。
この歳になると登山後の身体のダメージも大きくて、早々登りにも行けません(汗
季節的に北アルプス等の高山は無理ですが、寒くなる前にどこかの山に登りに行きたいと思っています。どこか良いお山があったら教えて下さい(笑)
では、また。
年に一度の山行記録をご覧戴きまして、ありがとうございます。
本当は登りに行きたい山は沢山あるのですが、年に1.2回が精一杯ですね。
この歳になると登山後の身体のダメージも大きくて、早々登りにも行けません(汗
季節的に北アルプス等の高山は無理ですが、寒くなる前にどこかの山に登りに行きたいと思っています。どこか良いお山があったら教えて下さい(笑)
では、また。